7月13日付朝日新聞記事によると、この改正も影響してか、自転車で人にけがをさせたときなどに補償を受けられる自転車保険の契約件数が、前年の2倍以上のペースで伸びているという。
道路交通法上、自転車は「軽車両」に分類される、れっきとした車両である。今回の道路交通法の改正によって定められた、講習受講義務の原因となる危険行為についても、罰則自体は以前から定められていた。ところが、今までは違反行為があっても摘発をしてしまうと、煩雑な裁判手続を前提とした赤切符を切ることになり、そうすると摘発を受けた人には前科がつき、いきなり刑事罰が科されることになるため、警察もよほど悪質な場合でなければ注意にとどめることがほとんどだった。
しかし、今回の道路交通法改正により、14種類の危険行為に対しては、自動車での違反と同様に裁判手続を前提としない規制を行うことができるようになったのだ。
自転車事故の賠償金高額化の傾向は、さらに加速する?
この改正を受けて、自転車事故が発生した際の法的責任などは変化するのだろうか? 保険に関する案件を多数扱う、西口竜司弁護士は次のように話す。
「今回定められた14種類の危険行為は大変危険な運転であり、法律で明確にされたことで警察も積極的に取り締まるようになります。スマートフォンをいじりながらの運転、ヘッドフォンをしての運転、傘を差しての運転はもちろん、事実上形骸化していた歩道走行の規制も、厳しく取り締まられることになったのです。これにより、国民はこれらの危険を認識している前提で責任を問われることになります」
危険を認識している前提での責任とは、具体的にどういうことだろうか?
「自転車で人身事故を発生させた場合、過失責任が問われることになります。過失とは、結果を予見する可能性があった場合に、その結果を回避する義務に違反することを意味します。14種類の危険行為に該当する運転が原因で事故が起きた場合、運転者は歩行者等の生命・身体に対して危害を加えることの予見が可能であったと裁判所に判断され、過失が認められやすくなってきます。結果、運転者は高額の賠償義務を課せられる可能性が増大するのです」(西口弁護士)