一方、ライブドアが粉飾したとされた額は53億円で、今回の東芝とは桁違いに少ない。ライブドア株は上場廃止となり、当時の代表取締役である堀江貴文氏など複数の役員が、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された。しかし、今回利益の水増しを指示したとされる東芝の経営陣だが、田中久雄社長が謝罪会見を開き、歴代の3社長が役職を辞任しただけで、刑事責任が追及される動きは今のところない。
堀江氏も自身のTwitterで、東芝について「徹底的に不正は追求されないと思いますね。日本を『代表』する企業ですからね笑」と、皮肉めいたコメントをしている。確かに、東芝は家電メーカーの枠にとどまらず、原発や重工業など国の基幹に関わるビジネスを展開する大企業だ。旧経営陣が逮捕されたりすれば、その影響は計り知れない。いちIT企業にすぎなかったライブドアとは異なるがゆえに、東芝の旧経営陣は刑事責任を問われず、特別扱いを受けるのだろうか?
「大企業だから刑事事件にならない」は間違い?
これに対し、自身もIT企業の経営に携わり上場を経験した佐藤宏和弁護士は「過去の粉飾決算事例を見ると、大企業だから優遇されるとか、影響が大きいから刑事事件にならないということはないでしょう」と言う。確かに、比較的新しい事例でも、オリンパス、カネボウ、西武鉄道などの大企業に対しても刑事告発が行われ、有罪判決が出されている。
「粉飾決算という言葉に明確な定義はありませんが、一つの基準として、金融商品取引法上の『重要事実の虚偽記載』という概念があります。これに当たる場合には『粉飾決算』と呼んでもいいでしょう。金融商品取引法は投資家保護を目的とする法律ですから、投資家から見て投資判断に影響を与えるような事実の虚偽記載があったといえるかどうかが『重要事実』を判断する決め手になります。さらに、刑事事件として立件するには、そのような『重要事実』の『虚偽記載』について故意、つまり“わざと”やったと証明することが必要です」(同)