ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 和歌山市、再開発で地元企業を圧迫  > 2ページ目
NEW

和歌山市、「94億円税金投入」ツタヤ図書館含む再開発に疑惑浮上…地元企業が次々廃業の恐れ

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

南海電鉄が優遇される理由

 一方、南海電鉄は、総事業費123億円の駅前再開発プロジェクトを、実質29億円の自己負担で実現可能になった。いくら公共交通機関を担う企業とはいえ、地元でテナント経営をするオーナーと比べると、非常に不公平ではないか。なぜ和歌山市では、そこまで南海電鉄を優遇する計画が進められたのだろうか。

 地元関係者は「実は以前、南海が和歌山市駅を廃止するという話が出ていたんです」と明かす。

 大阪の難波と和歌山市を結ぶ南海本線は、和歌山市中心街に入る手前で、紀ノ川を渡る。そこを走る鉄橋が老朽化していて、その補修に70億円かかるという話が出てきた。

「大阪に近い県北には、2012年に和歌山大学前(ふじと台)という新駅ができ、その一帯が新興住宅地として大規模な再開発が進んでいます。そこで南海電鉄は、鉄橋の先にある和歌山市駅を廃止して、そのニュータウンを和歌山の中心にする計画ではないかと言われてました。これなら鉄橋の補修は必要ないからです」(地元関係者)

 県庁所在地にあるターミナル駅が廃止というのは衝撃的だ。ところが、調べてもそのような計画が実際に検討された事実は確認できない。それにもかかわらず、この噂が信憑性を持ってしまうのは、それだけ和歌山市駅前の寂れ方がすさまじいということなのだろう。

 1日当たりの乗降客数2万人は、1972年の駅ビル開業当初に比べると半減。賑わいのシンボルだった高島屋が13年に撤退を表明してからは、中心市街地の空洞化に拍車がかかる一方。かくして「南海に出ていかれたら大変」という声が高まり、市駅前再開発は一刻も早く手をつけなければならない緊急課題となっていった。

 そんな折の13年秋、3期11年にわたって財政再建を優先してハコモノ建設に消極的だった大橋建一前市長が退任を表明。翌年8月の市長選では、和歌山県土整備部長だった尾花正啓氏が当選した。

 以後、アベノミクスに沸く世間の動きと連動するかのように、総事業費123億円の和歌山市駅前再開発計画はトントン拍子で進んでいった。そして、再開発プロジエクトが本格的に立ち上がった14年9月、唐突に出てきたのが市民図書館の移転だった。

 市民図書館移転発表から2年半後の17年11月、和歌山市は駅前に建設される市民図書館の指定管理者にCCCを選定、“ツタヤ図書館”になることが正式に決まった。

和歌山市、「94億円税金投入」ツタヤ図書館含む再開発に疑惑浮上…地元企業が次々廃業の恐れのページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!