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CCCは、13年から運営を担当した佐賀県の武雄市図書館・歴史資料館で、初年度に90万人を超える来館者数を記録したなどとメディアを賑わせた。しかし、来館者の大半は、話題のカフェや書店併設施設を物見遊山で訪れた人たちで、改装前の「図書館利用者」とは単純比較できないはずなのに、数字だけが一人歩きした。
和歌山市は、CCC指定管理に向けて、システム改修費だけで3億円の予算を昨年12月に議会承認。開館準備費として数億円かかるうえ、毎年の運営費にあたる「指定管理料」も年間3億円支払うことが確定している。地元市民にとっては「新しい図書館ができる」と単純に喜べる話ではない。
ある自治体関係者は、和歌山市が展開している再開発を「賑わい創出詐欺」だと批判する。
「鉄道会社もデべロッパーも、寂れた駅前に集客するノウハウなんか持っていません。ツタヤ図書館を呼んできたところで、中身のない商業施設ですから、一時的に人は集められても数年で飽きられるでしょう。ハコモノ建設では、東京資本や大阪資本の大企業が潤うだけで、地元企業には大した恩恵がありません。巨額の公費がつぎ込まれた南海電鉄とCCCは“濡れ手に粟”ですが、競争相手のテナントオーナーや書店経営者は到底、太刀打ちできないので、次々廃業に追い込まれるかもしれません」
つまり、もし駅前の図書館が人を集めたとしても、それによって和歌山市のまちづくりが成功するどころか、よりいっそう地元が衰退していく原因になるのではないかと懸念しているのだ。
本来、市民の社会教育の施設であるはずの公共図書館を「まちづくりの起爆剤にする」という出発点が、そもそも間違っているのかもしれない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)
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