EDFが赤字の元凶である原子炉製造のアレバNPに51~75%出資、アレバ本体に25%出資する枠組みが固まった。ところが、EDFはアレバ本体の株式の25%は持ち続けるが、アレバNPへの出資は51%に抑えると強硬に主張した。
残るアレバNPの株式の24%をどうするかが問題になった。仏政府は日本と中国に出資を求め、アレバと提携している三菱重工にも白羽の矢が立った。
中国へ、三菱重工の国産技術が流出
仏政府は外国企業に最大24%の株式を割り振る計画である。出資額は900億円近い。三菱重工に14%、中国広核集団(CGN)と中国核工業集団(CNNC)の2社に計10%の資本参加を望んでいるとされる。三菱重工は500億円程度の出資となる。
CGNとCNNCはアレバNPから技術支援を受けており、現在、EPR2基を建設中だ。30年までに100基近い原発建設を目指す中国市場の開拓はアレバにとって経営再建の柱であり、中国2社は三菱重工より重要性が格段に高い。さらに仏政府は9月に中国と使用済み核燃料の再処理工場の建設で合意した。
その上、CGNとCNNCはアレバから技術を導入して中型炉「華龍1号」(新型PWR)を開発した。華龍1号はアレバと三菱重工が共同開発した中型炉「アトメア1」と、もろに競合する。英国は東部のブラッドウェル原発に華龍1号を使うという。中国の習近平国家主席の訪英に合わせて発表された原発建設計画の中核をなす技術が華龍1号なのである。中国は原発事業会社の株式の3分の2を取得し、英国の原発事業へ総額400億ポンド(7兆4000億円)に上る投資をすると伝えられている。話半分にしても、大変な金額である。英国ではたちまち立地住民の建設反対運動が起こっている。
もし、三菱重工が出資を見送った場合、アトメア1は潰される。アレバNPに出資しても、英国の例が示す通りアトメア1の世界展開は進まず、むしろ日仏中連合を通じて三菱重工の持つ国産技術が中国2社へ流れる恐れが強い。
アレバNPだけでなくアレバ本体への出資に応じれば出資額はさらに膨らむ。三菱重工がアレバに投じる資金は、極言するなら中国での核燃料の再処理工場の建設費用に充てられることになる。中国にとって三菱重工が金を出すメリットは大きい。金だけでなく技術も手に入るわけだ。