今年9月、スイスの資源会社グレンコアに経営不安説が浮上した。石油のデリバティブ取引で多額の損失を出したのではないか、との見方から月末に株価が約3割も下落。当時、金融の保険に相当するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が、デフォルト(債務不履行)の確率を50%織り込んだ水準になったという。株価はその後持ち直したものの、現在は再度安値をうかがう状況にある。
資源価格の下落は、開発業者の経営を圧迫している。これだけなら、企業と従業員の問題だが、これを商品化したものが、日本の投資家にも幅広く販売されているのである。原油価格の下落の背景はいくつもあるが、そのひとつがシェールオイルやガスとの価格競争だ。技術の進歩によって、これまで掘削が不可能とされた場所から取れるようになったシェールと、産油国が採算を無視した競争を繰り広げている。シェールは2000年代後半から実用化され、一時もてはやされた経緯がある。
原油価格低下でMLPの収益が悪化
そこで組成されたのが、MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)で運用するファンドだ。MLPとは、米国で行われている共同投資事業形態のことで、主な投資対象となるのは石油や天然ガスの精製、備蓄、パイプライン(輸送)施設など、エネルギー・インフラにかかわる事業。1980年代に米国で誕生したものだが、2000年代にシェールガスが注目されるようになり、MLPへの注目度も高まった。
日本でも証券会社が提供するようになり、大手の対面証券やネット証券の大半が取り扱っている。その結果、MLPで運用するファンドに投資する個人が増加している。総所得の90%以上をシェールガスなど天然資源の採掘や精製などで上げていることがMLPの要件で、これを満たすと原則として法人税が免除される。金融商品取引所で取引されており、REIT(不動産投資信託)の資源版といえる商品だ。石油やシェールガスなどの需要が拡大し価格が維持されていれば、MLPは魅力的な投資商品だ。一方、エネルギー価格が下がり需要が減少すると、MLPの収益は悪化する。