2014年5月、被害者のひとりで信用社に定期預金をしていた顧(こ)さんは、1年定期で500万元(約1億円)を預金した。1年がたち、定期預金証明を持って信用社を訪れると、行員から「信用社のシステムには定期預金した記録がなく、定期預金証明は偽造されたものだ」と告げられた。証明書に書かれた信用社側の責任者は確かに実在するが、信用社の機関印が異なっているという。さらに顧さんの親戚もまた、同じ信用社で定期預金していた127万元(約2540万円)がなくなっていたという。
一方、同じく被害者の鄭さんは、信用社で当時責任者だった行員を探し当て、なぜこんなことが起きているのか問い詰めた。行員は「通帳に入れられた預金は2~3分で、すぐにある化学企業へ振り込まれたが、同企業は現在のところまだ操業を開始していない。直接操作を行った行員は、すでに警察によって取り調べを受けている」と答えたという。そのほか、260万元(約5200万円)を預金した胡さんは、満期になる前に預金を解約したいと思い信用社を訪れたが、残高はわずか500元(約1万円)しかなかったという。
11月、同信用社から預金を引き出そうとした複数の顧客の定期預金証明書が偽造であることが判明。被害総数22人、被害総額30億円の一大詐欺事件へと発展したのだった。警察は機関印と紙質の鑑定などを行い、2人の行員を金融証書偽造の容疑で逮捕・起訴した。
預金者たちは同信用社に対し、一斉に取引に関する調査と自分たちが預金した時の交易証明書発行を求めたが、個人に内部情報を提供することが禁じられているということを理由に、彼らの要求を拒否したのだった。
遠方の金融機関を利用するワケ
被害者の居住地域は同信用社のある山東省のほか、浙江省など広範囲にわたっている。なぜ、遠方の金融機関にわざわざ定期預金を組みにやってくるのか。中国駐在経験のある大手紙の記者は、こう証言する。