まず、中国は「コンセッション方式」という手法で相手国に迫っている点が見逃せない。要は人材も派遣して一体開発、一体運営するという手法だ。これは周辺開発も含めて中国が資金を提供し、現地企業と合弁を組む。鉄道車両の工場も現地に建設する。インフラ完成後の運営も中国主導で行う。投資に対して政府保証も求めない。これだと、相手国の政府の財政負担が少ないうえ、現地に付加価値が残りやすい。もちろん中国の負担は大きくなるが、中国は安全保障政策の一環として東南アジアのインフラ開発に乗り出しているので、採算は度外視でもいい。
これに対して日本はまだ「円借款」が中心だ。借款なので、いくら長期間低利の好条件で貸しても、相手国にしてみれば「借金」であることに変わりなく、いずれ返さないといけないものだ。新興国にしてみれば、恩義をそれほど感じておらず、「金持ちの国からちょっと借用」といった気分だろう。中国との競合に勝つためには、日本も「コンセッション方式」を海外でも採り入れる必要があるのではないか。
政治面での問題点
次に政治や外交のリーダーシップの欠如だ。安倍政権は2015年5月、中国が設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗するため、アジア開発銀行などと協力して今後5年間でアジアへのインフラ投資を3割増強して1100億ドル投資することを表明、口では威勢はいいが、戦略が伴っていないように見える。
東南アジア向けのインフラ輸出・開発の現状は、政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)に現地調査や下交渉などを丸投げしている面がある。それでもJBICやJICAの能力が高ければいいが、その実情は厳しい。
「特にJBICは現地の筋の悪いブローカーを使って金だけむしり取られ、ガセネタをつかまされた挙げ句、中国の出方を見誤ることが多い。現地大使館もJBICに紹介されたブローカーにころりと騙されている。インドネシアの高速鉄道の受注競争で日本が中国に負けたのも、インドネシア政府に食い込んで中国の出方をしっかり読んでいなかったため、条件面において最終段階で逆転された」(大手商社関係者)
さらに、JRなど民間企業を巻き込んだ対応も重要になるが、鉄道など輸送関連は国土交通省、原子力発電などエネルギー関連は経済産業省といった具合に監督官庁が違っている点も、インフラ輸出・開発で日本が戦略的に一枚岩になれない遠因がある。