とんだ醜聞である。宮崎謙介氏の議員辞職に同情する人があまりいないのも当然だろう。ただ、これをメディアが「不倫(もしくは、不倫疑惑)で辞任」と報じたりするのを見ると、いささか異を唱えたい気持ちになる。インターネット上で「不倫で辞職の前例となった」とか、過去の議員のスキャンダル事例を引き合いにして、宮崎氏が潔い対応をしたかのような言説を目にするのも、大いに違和感を覚える。
相次ぐ2012年初当選組の不祥事
宮崎氏の場合は、妻を裏切る「不倫」で辞めたわけではなく、甚だしい言行不一致で国民を欺き、裏切ったことを非難された末の辞職である。表では、よき夫よき父を演じ、「育児休暇を取得して早くから子育てに関わっていく」と宣言し、男性の育休取得を広げ、子育て環境を改善したいと考える人たちの共感を得た。筆者もその一人である。ところが裏では、それとまったく矛盾する行為をしていた。これだけ「言っていることと、やっていること」がまったく別のベクトルを向いていた彼は、国民に向かってウソをついたのに等しい。
その辺は本人もわきまえているようで、記者会見で「自分の主張と軽率な行動のつじつまが合わないことを深く反省し、議員辞職する決意です」と述べ、言行不一致が辞職の理由であると説明している。
加えて、「週刊文春」(文藝春秋)が今回報じた相手とは別の女性とも関係があったことを会見でも認めた。議員として居座り続ければ、新たな事実を突きつけられたり、説明を求められたりすることもあり得る。そうした場から彼が逃れる唯一の方法が、議員辞職でもあったのだろう。
それにしても、また2012年初当選組衆議院議員の不祥事だ。同年12月に行われた総選挙で、自民党は大勝して政権を奪還した。そこで初当選した議員の不祥事が相次いでいる。この1年を振り返ると、
・昨年3月、農林水産政務官だった中川郁子氏と、妻子がある門博文氏が路上でキスしている写真が「週刊新潮」(新潮社)に掲載された。
・同6月、党内の勉強会で大西英男氏が「マスコミを懲らしめる」などと発言。
・同8月、武藤貴也氏が「値上がり確実な新規公開株を国会議員枠で買える」などと持ちかけて金銭トラブルを起こしていたことが、「週刊文春」に報じられて離党した。
そして、今回の宮崎氏――という具合である。
自民党だけではない。石原慎太郎元東京都知事と橋下徹大阪市長(当時)の2トップ体制で大躍進した日本維新の会から出馬して初当選した上西小百合氏が、体調不良を理由に国会を休んでおきながら男性秘書と旅行に行っていた事実が4月に「週刊文春」で報じられ、党を除名となった。
小選挙区制度では、世論の風向き次第で特定の政党が地滑り的勝利を収めやすい。大勝した政党から、議員としての準備ができていない者、さらには議員にはふさわしくない者まで当選してしまうことが起き得るという問題は、小泉純一郎政権による“郵政選挙”で当選した新人議員が、「早く料亭に行ってみたい」などと発言した頃から指摘されてきた。
だからこそ、政党がふさわしい公認候補者を選ぶ責任が重くなってくるのだが、それにしても最近はお粗末な議員が多すぎやしないか。