この年間被ばく量「1ミリシーベルト以下」は、国際放射線防護委員会(ICRP)が、原発から復旧する際の参考値としている被ばく線量「年1~20ミリシーベルト」から、民主党政権が一番低い値を、長期目標値とした。この厳格な数値設定が、人々に一定の安心感を与える効果はあっただろうが、一方でこの数値をめぐっては議論がある。「科学的根拠に欠ける」「1ミリにこだわることで復興が遅れる」といった意見もあり、丸川氏がそういう考えであるなら、必要な科学的資料を用意し、きちんと説明をして福島の住民に納得してもらうなど目標値を修正するための努力をすべきだろう。しかし丸川氏は、「1ミリ」について「達成に向けて政府一丸で取り組む」と述べて、今後も長期目標として維持する方針を強調したというから訳がわからない。
いったい今回の発言の趣旨はなんだったのか。福島の環境と復興をどうするかというより、民主党政権時代をくさすための発言だったのではないかとすら思う。丸川氏は、昨年7月に安倍首相と登場した自民党のネット番組の中で、やはり民主党の辻元清美衆院議員に関して、事実無根の誹謗中傷を行った。辻元氏から抗議を受け、丸川氏は謝罪した。自民党としても文書での謝罪をしているが、丸川氏本人はこの失敗から全然学んでいないのではないか。
そのほか、岩城光英法相が国会での特定秘密保護法やTPPに関連した外国企業との訴訟に関する質問に対し、まともに答弁できずに審議がたびたびストップし、見かねて安倍首相が代わって答弁したこともある。また、島尻安伊子沖縄北方担当相は記者会見の際、北方領土のひとつである歯舞群島の「歯舞(はぼまい)」という漢字が読めず、秘書官から助け船を出してもらう始末。
これら大臣が果たして適材適所であるのか、疑問がふくらむ。彼らの任命責任は、もちろん安倍首相にある。適性に欠ける大臣は、できるだけ早く見極めをつけて降ろし、適任者を充ててもらいたい。党内に適任な人が見当たらなければ、外部に人材を求めればよい。特に、岩城法相の問題は深刻だ。
さらに、甘利明前経済再生相と秘書の「口利き疑惑」は、倫理的な問題のみならず、政治資金規正法とあっせん利得処罰法違反の疑いもある。捜査の進行を見て、国会に関係者を証人喚問し、事実の解明と再発防止のための議論もしなければならない。
あまりに次から次に問題が起きるために、私なども、より新しく、よりスキャンダラスな事柄に関心が向いてしまいがちだ。コトの軽重を間違えず、重大な問題は忘れずに見続けていくようにしなければと自分に言い聞かせている。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)