これは、量的緩和を正確に理解している。実は量的緩和の本質はシニョレッジ(通貨発行益)であり、政府紙幣の発行と同じだ。現在の日銀当座預金への付利はシニョレッジを減少させている。これをマイナス金利にすれば、シニョレッジの増加になり、ひいては予想インフレ率の上昇、予想実質金利の低下になる。
また、「日銀当座預金全体ではなく、一定額以上にマイナス金利を適用するという階層構造方式によって、金融機関への過度の負担を避けつつ、金融緩和効果を強化できる」という意見もあった。これは、金融機関への配慮であり、マイナス金利に反対するなという意味だ。
一方、反対委員の意見は以下である。
「量的・質的金融緩和を補完するための措置の導入直後のマイナス金利導入は、資産買入れの限界と受け止められるほか、複雑な仕組みは混乱・不安を招くリスクがあり、かえって、金融緩和効果を減衰させる惧れがある」
これは、日銀金融政策委員としては情けない意見だ。マイナス金利はすでに海外で導入されているので、きちんと勉強している金融関係者なら理解している。よくわからないから反対というなら、日銀政策委員の資質を欠いている。
次のような反対意見もあった。
「マネタリーベース増加目標維持とマイナス金利導入は論理的整合性に欠ける。……マイナス金利は実体経済への効果の割に市場機能や金融システムへの副作用が大きく、効果と副作用のバランスを欠く」
付利されたマネタリーベースではシニョレッジが少なくなる。この点から、この委員は量的緩和を正確に理解していない。それに、意味不明な「副作用」である。これは金融機関の収益が減るということなのに、恥ずかしくていえないのだろう。この委員は、単なる金融機関の利益代表にすぎず金融政策の理解も不十分なので、日銀金融政策委員に不適格だ。
反対者は金融機関の既得権を優先
最新の日銀の資金循環勘定に基づき、預金取扱機関と保険・年金基金のそれぞれについて、資産項目を現預金、貸出、国債、その他有価証券等、対外投資等、その他に分けてみよう。
預金取扱機関で、現預金が403兆円と、全体の資産1826兆円のうち22%を占めているのは驚くほかない。このうち日銀当座預金は250兆円である。この数字の異常さは、保険・年金基金の現預金は23兆円で全体の資産594兆円のわずか4%であるのと比べると一目瞭然だ。