人工知能、ホワイトカラーの仕事の大部分を代替可能に…人間でいえば上位16%のレベル
人工知能である米IBMのワトソンが、2011年2月に米国の人気クイズ番組『ジェパディ!』に挑戦し、2ゲームを通じて人間のチャンピオンを破り最高金額を獲得し、世界の大きな注目を集めた。日本でも、日本将棋連盟会長も務めた故米長邦雄永世棋聖が引退後の12年に、人工知能ソフトウェア「ボンクラーズ」と対局して敗れている。15年には、グーグルの関連企業が開発した人工知能ソフトウェアが、将棋よりも難易度が高いといわれた囲碁のプロ棋士を破っている。
ムーアの法則が示すように、物理的な制約を受けにくいデジタル技術の急速な進歩によって、雇用喪失の議論は、グローバル化による先進工業地域から開発途上地域への事業移転による前者における雇用喪失から、機械による人間の仕事の代替へと変わりつつある。
米国では11年10月に出版された米マサチューセッツ工科大学のエリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーによる『Race against the machine』(邦題:機械との競争/日経BP社/13年2月刊)が、機械による雇用喪失に関する議論の端緒を切り、13年9月に英オックスフォード大学のミッシェル・オズボーンとカール・ベネディクトフレイが論文『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?(雇用の未来―コンピューター化によって仕事はどのくらい影響をうけるのか)』を発表。702の職種を挙げて、そのすべてについてコンピューターによって取って代わられる確率を子細に試算したことで、議論は日本でも一気に高まった。
日本におけるコンピューター技術よる雇用喪失の確率を議論する本や記事が多く出て、一種のブームのようになる。昨年12月には、大手シンクタンクの野村総合研究所が、日本における601の職種についての代替確率の試算を発表し、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」なるとしている。
14年1月には、『機械との競争』の著者が『The Second Machine Age』(邦題:ザ・セカンド・マシン・エイジ/15年8月/日経BP社)を著し、人類社会における工業化の歴史の文脈において、急速に進歩するコンピューター技術が人間の仕事に与える影響を巨視的に論じ、コンピューター技術と人間の共存に関する政策論にも踏み込んでいる。今後を考えるうえで、大変参考になる論考である。
これらを背景として、日本において仕事が、コンピューター技術によってどのように代替される可能性があるのかを、文化と人口動態も視野に入れて多面的に論じてみたい。