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3つ目の課題は、EU圏内の金融機関の問題だ。EU圏最大の銀行であるドイツ銀行は、2015年12月期の決算で約8800億円の赤字に落ちこんだ。金融市場では一時、同行が金融派生商品で多額の損失が発生するとの見方が広がり、株価が大きく下落する場面もあった。そのほかにも、ドイツ国内のコメルツ銀行や、英国バークレイズ銀行などほかの大手銀行株も大きく売られた。ポルトガルやスペイン、さらにはイタリアの銀行は、伝統的に同族経営などが多く経営の近代化が遅れているという。ガバナンスの機能が働きにくく、不良債権の発生に歯止めがかかりにくいとの見方も多い。
金融機関の経営懸念と欧州経済の行方
ギリシャやアイルランド、ポルトガルなどの信用不安問題によって、欧州地域では大きな痛手を被った金融機関があった。それらの経営状況はかなり回復しているものの、金融市場では「まだ完全に回復していない銀行がある」との観測もある。金融機関の不良債権処理は、基本的に儲けによって不良債権を償却するという手続きになる。欧州経済の回復が極めて緩やかななか、金融機関が不良債権処理の原資を稼ぎ出すことは口で言うほど容易なことではない。
しかも、足元の欧州諸国の一部でデフレ圧力が高まっていることも見逃せない。欧州諸国の物価水準を概括すると、一部にはすでに水面に落ちこむ寸前という国もある。重要なポイントは、物価が下落するデフレ傾向のなかでは、不良債権処理が一段と困難になることだ。
デフレ状態になると基本的に貨幣価値が上昇する。貨幣価値が上がると償却する不良債権の価値が上がり、その分、金融機関の負担が増えることになるからだ。そうした状況下、金融機関が償却原資を無理して稼ぎ出そうと焦ると、どうしてもディーリングなどの分野で大きな持ち高=ポジションを保有しがちになる。大きなポジションを持つとそれだけ抱えるリスク量が増え、金融市場が不安定になると、多額の損失を被るケースが出てくる。
今回のドイツ銀行の信用不安の噂は、同行が多額の金融派生商品を保有していることが背景のひとつになったと見られる。ある意味では、欧州地域の経済・金融状況の悪循環が続いたことが重要な原因となった。
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