複雑なパスワードと暗証番号
カードを交付するには、申請者が受け取りに来たとき、当該市町村の職員が専用端末を操作してカードを利用できるようにする。具体的には、内蔵ICチップの情報を読み取って地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が運営するセンターサーバーに接続し、申請者が申請したパスワードと暗証番号を設定する。
暗証番号は(1)署名用電子証明書、(2)利用者証明用電子証明書、(3)住民基本台帳、(4)券面事項入力補助の4種あり、(1)は英数字6文字以上16文字以下、(2)~(4)は数字4けたとなっている。(2)~(4)は同じでも構わないのだが、その意味や用途をひとりずつ説明したうえで個々に設定するので、それだけで一仕事だ。
用語がチンプンカンプンなうえ、いきなりパスワードと暗証番号を求められれば、戸惑うのは高齢者ばかりではない。類推しやすい所番地や生年月日、固定電話の下4けたなどは使わないほうがいい、と注意されればなおさらだ。
制度がスタートする前、市町村職員の間から「カードの交付は混乱必至」の声が上がっていた。公的介護制度や生活保護制度なども同様だが、国が制度を定め、市町村に実務を担わせる「二階建て行政」では、中央官僚の理屈が優先され、現場が無視されることが珍しくない。
滞留数は想定の半分でも、なぜトラブル?
そのシステムがトラブルを起こしている。総務省によると、マイナンバーカードの申請は890万件、うち581万枚が市町村に発送され、すでに91万枚が申請者に手渡されている。差し引き490万枚が市町村の窓口に滞留していることになる(数値は3月2日現在)。
滞留の原因は、センターサーバーのシステムトラブル。交付作業が本格化したことに伴ってセンターサーバーにアクセスが集中した。その結果、サーバーの処理速度が遅くなるばかりか、処理能力を超えてダウンしてしまう。システムダウンは1、2月で計7回、システム・フリーズはほぼ毎日という。
政府は、初年度(2016年3月末まで)のマイナンバーカード交付枚数を1000万枚と想定している。890万枚という数字はその範囲内、滞留分490万枚は想定の半分にすぎない。にもかかわらずサーバーがトラブルを起こすのはなぜなのか。J-LISはサーバーを1台追加して3台体制としたが、トラブルが収まらないため現在は4台。それでも処理速度が改善しないとあって、J-LISは「鋭意調査中」と言うほかない。