システムを所管するJ-LISがそれでいいのか、と批判する向きもあるが、内実を知る人にとっては想定された事態といえる。J-LISは総務省の外郭団体、つまり官僚機構の延長で、システムの構築・運用は大手ITベンダーに任されているのが実情だからだ。
かつて市町村のITシステム市場は国産コンピュータ・メーカーを育成する役目を負っていた。パソコンとオープンシステムの普及でその役割は低下したが、NEC、東芝、日立製作所、富士通、NTT系SIerが国や自治体のシステムを主導する構図は変わっていない。
共同無責任の末の泣き寝入り
マイナンバー関連システムの入札では、「中間サーバー・プラットフォームの構築・運用業務」をNECが14年12月に約200億円で、「情報提供ネットワークシステム」と「番号生成システム」はNTTコミュニケーションズ、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所の5社コンソーシアムが14年3月に計192億円で落札している。
実は「情報提供ネットワークシステム」と「番号生成システム」はいちど入札が不調(不成立)となり、再度の入札で5社連合が単独応札したという経緯がある。住基ネットに関わったITベンダーが協力するほうがいいという説明は一理あるようだが、不調後に大手5社のコンソーシアムが実質的な随意契約で落札した背後を疑問視する向きもある。
今回のシステムトラブルはそれとは無縁であるかもしれないが、5社コンソーシアムがアーキテクチャーや開発手法を共有せず、バラバラに処理プロセスの開発を分担してつなぎ合わせただけだとすると、十分に推測できるのは共同無責任ないし責任を押しつけ合った末に国民が泣き寝入りする構図だ。それは聖火台の設置を忘れた新国立競技場のドタバタとよく似ている。
「国民の利便」「行政の効率化」を謳う国の制度とシステムに振り回される市町村、改善の指摘を無視したまま新しいシステムで糊塗する。住民基本台帳ネットワークシステムと同じ轍を踏まないためには、本格運用が始まる前にいちど立ち止まったほうがいい。国が主体となってシステム要件を再確認し、不具合の原因を徹底的に究明すべきだろう。それは今をおいてほかにない。
(文=佃均/ITジャーナリスト)