しかし、実は今、ヒスパニック層の有権者から一番人気を得ているのはトランプ氏である。つまり、トランプ氏は、確かに“不法移民”からの人気はないが、正規の手続きを経た“合法移民”からは支持を得ているのである。
なぜなら、不法な移民が存在することによって、正当な移民たちまでもが差別的に扱われるという現状が、アメリカ社会にはあるからだ。そのため、合法移民にとって、トランプ氏の移民政策は自分たちの権利を守るための重要な政策といえる。
また、トランプ氏のさまざまな発言は、「ポリティカル・コレクトネス」に対するアメリカ社会の闇を表面化させたともいえる。ポリティカル・コレクトネスとは、その名の通り、「差別や偏見を排除するために、政治的に中立な表現・用語を使用しよう」というものである。
例えば、「チェアマン(議長)」という言葉は、「男性を示唆する=女性差別となり得る」ということで、「チェアパーソン」と言い換えられている。また、「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」や「フライトアテンダント」と呼び名を変えたことも、この文脈に沿ったものだ。
差別や偏見はもちろん、いわゆるヘイト表現を禁じる。これは人道的な一方で、アメリカ社会に「言いたいことを言えない」状況をつくり出しており、アメリカ人はそんな状況に「NO」を突き付けていた。
そして、それを議論の俎上に載せたのが、ほかならぬトランプ氏である。トランプ氏の発言は、ある意味でアメリカ人の本音であり、彼はいわば国民の代弁者の役割を果たしている。だからこそ、トランプ氏に対して、多くのアメリカ人が拍手喝采を送っているのである。
米大統領選で5000億円が動くワケ
また、米大統領選は民主党・共和党併せて約5000億円の資金が必要といわれる。これは広告費のようなものだが、今はこの多額のコストが割に合わなくなってきている。
メディアが優位性を持ち、世論を誘導することができたからこそ、候補者は宣伝費として大金を支払う価値があり、いわゆるコストパフォーマンスが良かった。しかし、前述したように、CNNがいくらネガキャンを繰り広げても、トランプ氏の支持率は上がる一方だ。世論誘導ができず、有権者を動かすことができないとなれば、このコストは無駄になりかねない。
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