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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

トランプの差別・過激発言に狂喜乱舞する米国民の深い闇 まさに米国民の本音だった!

文=渡邉哲也/経済評論家

 逆に言えば、だからこそ、アメリカの多くのメディアがヒステリックにトランプ氏を叩く、という構図になっているわけだ。

 そして、今回の米大統領選の特徴のひとつが、民主党・共和党ともに、いわゆる主流派の苦戦が目立つことだ。例えば、本来なら共和党の主流派として、元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏が台頭すると思われていたが、彼は人気を獲得することができず、早々に撤退に追い込まれた。

 そして、その代わりといえるのが上院議員のマルコ・ルビオ氏だが、そのルビオ氏も、同じく上院議員のテッド・クルーズ氏の後塵を拝している。

 ロビー活動で動く米大統領選では、候補者は撤退の際にほかの候補者を支援するかたちで降りる。つまり、自分に集まっていた資金と票を、勝てそうな候補者にシフトすることで、自らの支援者やロビイストたちを守るわけだ。

 今回、ブッシュ氏が抱えていた資金と票はルビオ氏に流れたとされるが、それでも著しい効果を上げることはできなかった。

トランプ氏を支持する「プア・ホワイト」

 また、共和党においては、「スーパーPAC(特別政治活動委員会)」と呼ばれる巨大な政治資金管理団体が、選挙戦の行方を左右するといわれる。これは、無制限に政治資金を集めることができる団体で、スーパーPACを通じて多くの政治資金を集めた候補が有利になるといわれる。

 しかし、前述のように、スーパーPACを通じてブッシュ氏からルビオ氏に資金が流れたが、それが奏功しているとは言いがたいのが現状だ。

 そして、現在2位につけているのがクルーズ氏だ。キリスト教福音派の支持を集めるクルーズ氏は、共和党の保守本流とは一線を画する保守強硬派といわれ、健闘している。

 しかし、そのクルーズ氏もトランプ氏の独走を許している。トランプ氏を支持しているのは、主に「プア・ホワイト」といわれる低学歴・低収入の白人や、いわゆる一般大衆であり、浮動票がトランプ氏を共和党のトップに押し上げているといわれる。

 また、民主党においても大異変が起きている。詳しくは次稿に譲るが、いずれにせよ、主流派が苦戦し、多額のコストをかけても世論誘導ができなくなりつつある現状は、これまでの米大統領選のスキームを根底から覆すものであるといえるだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

●「渡邉哲也公式サイト

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