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だが、それでも「1000兆円を超える借金は、大きくてそれ自体が恐怖である」という人もいるかもしれない。ソシエテジェネラル証券東京支店調査部チーフエコノミストの会田卓司氏は、論説『財政再建へ正しい道筋 政府負債残高GDP比率がとうとうピークアウト』のなかで、政府がリフレ政策(デフレを脱却してインフレ目標の到達を目指す政策)を採用したため、名目GDPが着実に増加して税収の回復に至り、政府の負債残高のGDP比率がピークから減少に転じて財政再建にメドがついていることを解説している。
さらに、政府の負債(=借金)残高に注目するのはあまり適当ではない。個々人でも企業でも負債と資産のバランスがとれているかどうかに注目すべきだろう。政府も同じで、そのバランスシートに注目して政府の純負債がどう変化しているかに注目しておくべきだ。この点については、筆者は論説『財政危機のウソと大災害』のなかでも書いたが、アベノミクス発動が効果をあげており、日本の純負債残高は14年後半では約200兆円あったものが、現時点では100兆円程度に圧縮されている。
この純負債の圧縮に当たって効果があったのは、消費増税で下振れしてしまったもののアベノミクスの12年度後半から13年、14年前半ぐらいまでの名目GDP成長率の増加とそれによる税収増、日本銀行による長期国債を中心とした買いオペやマイナス金利政策などによる政府部門の「資産」増加効果が貢献していると思われる。ここでも今後の財政規律破綻の可能性は、消費増税をしないことではなく、むしろ増税して経済を悪化させてしまうことで高まってしまうだろう。
日本の財政危機は、本当は財政危機を声高に主張する勢力自体がもたらしているといえる。このような増税教をいかに退治するか、そこに日本経済の浮沈がかかっている。
(文=田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授)
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