各地の動向について報じる同日付朝日新聞より
同検証委では、事前の防災マニュアルに不備があったのではないかという点や、当日の避難行動とそのルート、さらには、市教委の事後対応について、第三者の立場で検証することになっている。検証委は「公開」が基本とされている。しかし、第1回目の検証委の開催前に、カメラ撮影をめぐりマスコミと事務局ともめる一幕があった。
事務局「ご遺族はカメラで撮影しても構わない」
取材者「意味がわかりません」
取材者「現在、原子力規制委員会でも、ネットでオンタイムで中継している時代なんですけど」
事務局「委員の意向としか……」
取材者「公的なものですよね、検証委員会は」
事務局「ええ」
取材者「『公開』と『撮影』の違いはなんですか?」
遺族「遺族も、全部撮影されても構わないですよ」
「委員長の選出まで」との縛りが事務局から出されていたことに、取材者側、特にカメラ撮影者が納得いかなかったからだ。そのため、委員会でどこまで撮影を認めるかをもう一度審議することになり、室崎委員長が選出された後、議論になった。
「先ほど我々が亡くなられた方を思って黙祷を捧げているときに、あのパシャッ、パシャッという音はなんですか。報道の方も、亡くなられた方を思っている心を少しはお考えになっていただきたい。そのとき大変腹立たしく思いました」
「(福知山脱線事故の検証を踏まえて)議論の過程で自分の認識が変わっていくかもしれない。実際、変わってきた。また多分こうかもしれないという認定があった後に、別の事実が出てきて、事実認定が変わったりしました。録音、録画について、やはり、全議論の過程を録音・録画するというのはいささか難しくなるのではないか」
「映像というのは、特に、一部切り取られて、決して遺族を守るものばかりではないということを私も経験しております」
室崎委員長はこうした議論を踏まえて「もう少し報道関係の方と信頼関係を築くというプロセスがあると思いますけど、どういう条件で撮影された材料をお使いになるかという、端的に言えば、勝手にYouTubeに流さないとか……。そういうルールができた段階で、もしできたとすれば、それを前提に公開を許可することもあるという取り扱いで」と、撮影・録画の議論はここまでとなった。
マスコミへの全公開については、否定的な議論が続き、委員長が撮影を許可する範囲が事前の方針通り、狭い範囲となった。制限に関しては、遺族の撮影した映像にも向けられた。室崎委員長は会合の終盤で「その映像がYouTubeなどに出てしまうとやっぱりさっきと同じような問題が起きるので、強制できないかもしれませんが、違った目的で使っていただかないようにしなければいけない」と遺族以外への流出を警戒していた。
●「肝心要のことは出てこない」(遺族)
これを受けて、第2回目の検証委でも、遺族の意見陳述以外は、黙祷部分を含めて撮影が禁じられた。実は、第2回目の開催前、私を含めたフリーの取材者らが「記者会見についての申し入れ」を室崎委員長あてに提出していた。委員会のメンバーとの信頼関係を導き出す手段として、検証委後の記者会見には、全委員が出席することを願い出た。