責任転嫁の応酬
そこで、Business Journal(以下、当メディア)は、Aの製造元に食品添加物ではない化学物質があるにもかかわらず「食品添加物100%」と謳っているのは、不当表示ではないのかと問い合わせをしました。すると、「以前、外部から指摘があり、2年前から『食品添加物100%』 という文言の使用は取りやめている」と回答がありました。しかも、「取引先にはその旨を伝えてある」といい、「食品添加物100%」を掲げて販売している会社があることについては関与しないという姿勢でした。
これを受けて、ネット上で同商品を販売している複数の企業に問い合わせをしたところ、異口同音に、「食品添加物ではない物質が使われていることは初耳」としたうえで、「成分を調合している卸業者から仕入れているから、問い合わせはそちらにしてほしい」と答えました。
そのため今度は、Aを取り扱っている卸販売業者に問い合わせをしました。すると、「確かにAの製造元から昨年1月に『ラベルが変わる』との連絡はあったが、そんな危険な物質を使っていることは知らされていない」と不信感をあらわにしました。また、アマゾンなどに一度商品を登録すると、その後は商品ページの変更が困難であるとの事情を明かし、ラベル変更された後でも「食品添加物100%」を謳う商品が掲載されている理由を説明しました。
このように、責任の所在が不明確なまま、同商品は展開されていました。
Aは現在、「食品添加物だから安全」という謳い文句は中止し、「農薬系薬剤を使用していないから安心」としています。
しかし、仮に食品添加物100%であったとしても、決して安全とは言い切れません。イマザリル、オルトフェノール、ジフェニルといった農薬も防カビ剤として食品添加物に指定されています。これらは、レモン、バナナなどの輸入果実に収穫後、防腐剤代わりに使われるポストハーベスト農薬といわれるもので、いずれも発がん性が指摘されています。
もちろん、Aにポストハーベスト農薬は使用されていませんが、農薬も食品添加物に指定されているのですから、「食品添加物だから安全」とは決していえません。また、食品添加物には、農薬よりも発がん性や遺伝毒性の強いニトロフラン誘導体の合成殺菌剤・AF-2(フリルフラマイド)が、かつて足かけ10年間も使用されていたことがあります。食品添加物だから安全だなんて思うと、とんでもないことになります。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)