「CCCの新刊選書の多くは、新古書を対象に行ったと考えられます。高い金を使って安物を買ったことになります」(池沢氏)
確かに、鮮度の高い新刊を大量に入れることができる機会に、売れ残りや古書店にあるような本ばかりを、新刊として定価で購入していれば、これは市民に対する背信行為といっても言い過ぎではないだろう。
詳細なデータは開示拒否
一方、仮に図書館に最新刊が2万冊も入っていたら、多賀城図書館に併設されている蔦屋書店の魅力は、大いに色褪せていただろう。そういう意味では、図書館が古い本を多く購入したことで、両者の差別化ができたといえるだろう。
そこで、筆者は再度CCCに対して「ネットオフの中古データを基に選書したリストで、TRC等に新刊の注文を出したのではないか」と質問をした。それに対し、「問い合わせいただきました件ですが、事実ではございません」と返答があった。
さらに、ネットオフを運営するリネットジャパンに対して、「CCCから依頼を受けて多賀城市立図書館へ納本したことがあるか」「選書リストの基となるデータを作成したか」を問い合わせた。だが、「取引相手方であるCCC様や関係各所への確認が必要のため、もうしばらく時間を頂戴したい」との返答があったきり、その後、音沙汰なしだった。
結局、CCCがネットオフの中古データを基に新刊を選書したかどうかは不明だが、新刊の選書リストの一部が中古本のような古い本だらけだったのは、まぎれもない事実だ。
下の表は、第8回選書リスト中にある「ビジネス」の一部を抜き出したものだ。刊行後5~10年以上経過したものがズラリと並んでいる。かつて話題になった本も多数含まれているが、「鮮度が命」ともいえるビジネス書のリストとしては不適切としかいえない。
追加蔵書購入の原資が、市民の納めた税金である以上、CCCは図書の詳細な納本状況について積極的に情報開示すべきである。
CCCが運営する「ツタヤ図書館」については多賀城図書館に限らず、佐賀県・武雄市図書館、神奈川県・海老名市立中央図書館、岡山県高梁市でも、さまざまな不祥事や疑惑が次々に浮上している。だが、個々の案件について各市当局、指定管理者ともに、市民に対しての説明は不十分で、多くの事案がうやむやのままになっている。
それにもかかわらず、さらに宮崎県延岡市、山口県周南市にも、ツタヤ図書館の開設されることが決まっている。いまだに視察に訪れる地方議員が後を絶たないことから、今後もツタヤ図書館は全国各地に広まっていくのかもしれない。
あなたは、自分の地元に新しい図書館ができたとして、見た目がいくら素晴らしくても、市民に対して説明責任を十分に果たさない事業者に任せることを是とするだろうか。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)