「紀元7世紀の当時、朝鮮半島には高句麗と百済と新羅という3つの国がありました。新羅はどうやって百済を滅ぼしたかというと、中国の唐王朝の皇帝にお願いしたのです。『百済を支援しているのは高句麗だから、我々と一緒に、まず百済を滅ぼしてから、一緒にまた高句麗をやっつけましょう』というのが新羅の言い分です。よく『朝鮮半島は外国の軍隊に侵略された』と言われますが、実際は自分たちで侵略軍を呼び込んでいるのです。
その後に戦争に巻き込まれたのが日本です。百済と日本は伝統的に友好国でした。新羅のもくろみ通りに百済が滅ぼされますが、百済の残された勢力が『百済の復興に手を貸してください』と大和朝廷に泣きついてきたのです。日本の軍が入り、唐軍と『白村江の戦い』が繰り広げられて、日本は負けました」(同)
このような例は、近代でもみられるようだ。
「日清戦争がそうです。1894年に朝鮮では『東学党の乱』と呼ばれる農民反乱がありました。朝鮮王朝はこれに手を焼いて、清王朝に出兵の要請をしたのです。自国の農民一揆を鎮圧することができずに他国の軍隊に頼んだわけですが、そんな国は世界史上ほかに類を見ないですよ。
清の軍隊が朝鮮半島に入ってきたので、『朝鮮は独立国であるべきだ』と考える日本は出兵し、日清戦争に発展しました。自分たちの内紛のために外国を巻き込む。それでいて『外国が悪い、自分たちは被害者だ』というのは、おかしいと言わざるを得ません」(同)
米中の大国を手のひらで転がす北朝鮮・金正恩
いわば、周辺諸国を巻き込むのは朝鮮半島の伝統というわけだ。現に、今も北朝鮮は弾道ミサイル発射や核実験によって国際社会を巻き込むかたちで自国の力を誇示している。石平氏は、現在の朝鮮半島をめぐる構図をどう見るのだろうか。
「北朝鮮の暴挙に対して、中国にはいくつかの思惑があります。ひとつは、北朝鮮が崩壊して韓国主導で朝鮮半島が統一されると、アメリカの同盟国である韓国と国境を接することになってしまう。そうなると、中国は地政学的に不利ですね。
2つ目は、北朝鮮が暴れるとアメリカは中国に頼み込んでくる。頼まれる側のほうが立場が強くなるため、対米外交において有利な位置に立てます。当初、ドナルド・トランプ大統領は貿易問題などで中国を非難していましたが、一時期は矛を収めたでしょう。
3つ目は、北朝鮮が暴れることで中国の脅威への関心が薄れるという効果です。中国は南シナ海で人工島を建設して軍事拠点化していますが、北朝鮮の脅威が増せば増すほど、国際社会の非難の的は南シナ海から北朝鮮に焦点が移ります。
北朝鮮が暴れて悪者になればなるほど、国家主席の習近平は他国から頼まれるかたちで国際秩序を維持する立場になる。つまり、悪人が善人に見えるようになるわけですよ。
そういう意味でも、中国にとって北朝鮮は必要な存在なのです。ある程度は国際社会と協調して経済制裁を加えることはあっても、北朝鮮の息の根を完全に止めるということはしないでしょう。
仮に中国に徹底的に追い詰められれば、北朝鮮は利権をロシアのウラジーミル・プーチン大統領に売りつけるという手もあります。実は、今一番たくさんのカードを持っているのは、金正恩朝鮮労働党委員長ですよ。昔からの伝統に従って周辺の大国を巻き込み、大国の利害関係を自分たちがコントロールする。その結果、実は北朝鮮が一番有利な位置に立っているという構図です。大国を手のひらで転がしているのが、今の北朝鮮といえるでしょう」(同)
『朝鮮半島はなぜいつも地獄が繰り返されるのか 中国人ですら韓民族に関わりたくない本当の理由』 なぜ韓民族は約束を守れないのか? どうしてすべて他人のせいにするのか? 朝鮮半島に内紛が絶えないのはなぜか? 元中国人の著者だからわかる韓民族の歴史的悪癖とその背景。