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偽ドル札は、そこからアジア中の両替商に売られていく。本物にしか見えない偽ドル札は、本物の紙幣より格安で取引される。アジアにはライセンスを持った街の両替商がたくさん存在しており、彼らが小口の両替に偽ドル札を使えば、かなり儲けることができる。両替された偽ドル札は、やがてアメリカにわたってどこかの銀行に回収されることになり、北朝鮮としては自動的にマネーロンダリングが完了するわけだ。
現在、日本と北朝鮮との間に国交はないが、北朝鮮と国交を結んでいる国は意外と多い。アジアでいえば、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国とは国交がある。
国交のない日本にも拠点があるぐらいなので、国交を結んでいる国々にはより強固な拠点があることは想像に難くない。各国に北朝鮮の人々が多く居住するコミュニティや北朝鮮料理のレストランなどがあり、工作員や諜報員の拠点となっているのが実情だ。
北朝鮮のミサイル発射が3月から増えたワケ
前述したバンコ・デルタ・アジアへの制裁によって、北朝鮮は国際金融の裏ルートを失った。しかし、核開発をめぐる「6カ国協議」に参加する見返りに、アメリカは北朝鮮に対して一種のお目こぼしを与えていた。そのひとつが、ロシアへの送金だ。
北朝鮮の貿易会社がロシアの銀行に口座を持っており、バンコ・デルタ・アジアの制裁後、北朝鮮はそのロシアの口座を海外送金の拠点としていた。そして、ロシアン・マフィアが仲介するかたちで武器や麻薬とドルが取引されていたのだが、アメリカはそれをわかっていて目をつむっていたのだ。
しかしながら、今年3月にSWIFTが北朝鮮の全銀行に対するサービス停止を発表した。これによって、北朝鮮はロシアへの送金も禁じられたことになる。ドナルド・トランプ大統領が就任したアメリカが本気で手綱を締めにかかったわけだが、その3月のSWIFT停止以降、北朝鮮のミサイル発射回数が格段に増えたことは周知の通りだ。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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