このなかで、安倍首相は「ミサイル防衛システムが日米で協力して対処するシステムといってもいい」と言及しているのが、念頭にあるのはイージス・アショアであるのは、まず間違いないだろう。
イージス・アショアは、イージス艦に搭載しているミサイル防衛システムを地上に配備した装備だ。システム自体はレーダーやミサイル発射装置などで構成されている。もちろん開発国は米国であり、イージス・アショアは北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛の一環としてルーマニアに配備されている。つまり、主にロシアからのミサイル攻撃に対処する必要性からだ。
日本がイージス・アショアの本体部分とともに、その関連部分を含めた新装備を取得するのは、北朝鮮の弾道ミサイルに対処するためであることはいうまでもない。日本は今年8月、ワシントンで開かれた外務・防衛担当閣僚による会合で、北朝鮮の弾道ミサイル防衛の新装備としてイージス・アショア導入を表明しており、これを受けて、防衛省は来年度予算案の概算要求に盛り込む方針を固めている。正確な購入金額は今のところ不明だが、1基600億円で、日本全土を防衛範囲に含めるには2基必要で計1200億円となる。
米国はすでに北朝鮮の弾道ミサイルに対処するため、韓国に米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」を配備しているが、THAADは1基1000億円で、日本防衛には3基必要なので、イージス・アショアのほうがTHAADよりも割安で効率的。しかも、防衛省の見解として「イージス・アショアのミサイル探知範囲はTHAADより広範で、対応できる高度も高い」ため性能が高いということになり、日本としてはイージス・アショア導入は理にかなっているようだ。
中国の猛抗議は必至
ここで気になるのは中国の反応だ。少なくとも中国政府は日本のイージス・アショア導入決定については、ほとんど反応らしい反応はしていない。だが、筆者がこの夏に遼寧省瀋陽市を訪れた際、地元の旅行代理店の日本担当者は「日本がアメリカのミサイル防衛システムを導入することに政府は反対しており、『日本への団体旅行を制限せよ』との通達が北京から会社のほうにきているというのですよ。なんですか、そのミサイル防衛システムとはなんですか? わかりますか?」と質問されたことがある。