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その際、筆者はイージス・アショアについての具体的な知識はなかったが、「ああ、韓国に配備されたTHAADと同じようなミサイル防衛システムなのだろうな」と感じていた。実際に日本に帰って調べてみると、日米の外務・防衛担当閣僚による会合で、日本側がイージス・アショアの導入に言及していることがわかった。さらに、それがTHAADよりも高性能だということで、「これは中国が怒るだろうな」と直感した。
なぜならば、それはTHAADが韓国に配備されたことからもわかる。THAAD配備によって、在韓米軍は北朝鮮のミサイル攻撃はおろか、中国のミサイル攻撃も瞬時にわかり、中国のミサイル攻撃能力もほぼ無力化されるためだ。このため、THAAD配備後の中国の抗議は「凄まじい」の一語に尽きる。韓国への中国人団体旅行はほぼなくなっており、中国内での韓国製品の不買運動も実施され、中国内では韓国人とみれば殴られかねないほどと伝えられている。THAADが配備された今年3月以降、中国における韓国企業の経済被害は年末までに8兆5000億ウォン(約8346億円)にも上ることが予想されるほどだ。
それが、日本でTHAADよりも性能が高いイージス・アショアが配備されればどうなるか、十分想像はつく。日本でも一時、中国人団体観光客が来なくなるとの情報も飛び交ったが、今のところ、それほどでもないようだ。
しかし、イージス・アショアが実際に配備されれば、対日不信が根強い習近平政権のことだから、2012年の沖縄県尖閣諸島国有化以上の反対運動が起きるに違いない。「大使召還」「国交断絶」にまでも突っ走ってしまうかもしれない。
なぜならば、今回の中国共産党の第19回党大会で習近平指導部の権力基盤が固まったとはいえ、新指導部は「お友達」だらけであり、隙あらば習氏の足を引っ張ろうとする政敵は長老指導者を中心に多く存在するだけに、習氏としては敏感な問題である対日関係で妥協すれば、自分の立場が危なくなるのは必定だからである。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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