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その後、たびたび紀尾井町にあったヴェルサーチ直営店で偶然お目にかかると、「ピンク色のバッグはまだ元気ですか?」と聞かれた。「少し痛んできています」と伝えると、笑顔で「じゃあ、もういらないわ」とおっしゃる。すでに閉店してしまったその店内には、ヴェルサーチ柄の派手で大きなソファセットが置かれており、そこで沙知代さんはよくお茶を飲んでいた。
「あなたも座りなさい、一緒に飲みなさいよ」と言われ、何度かご一緒させていただいたのだが、沙知代さんが選んでいたのはいつも克也さんの洋服だった。当時プロ野球球団の監督だった克也さんの様子について、さまざまなお話を聞かせていただいた。
レオナールのショップでも偶然お目にかかることがあったが、そこでは沙知代さん自身の洋服を選んでおられ、私も数点お見立てしたことがある。美しいプリント柄が好きな女性だった。
そんな沙知代さんが亡くなって、克也さんはどれほど気落ちされていることだろう。準備する間もない死は受け入れがたいことでもある。誰かが克也さんを支えて、悲しみを乗り越える「喪の作業」に寄り添ってくれるよう望むしかない。沙知代さんは、「潔い夫婦の生きざまを見せてあげる。自由闊達に生きて、人さまに迷惑かけることなく退きなさい」と遺言を残したのではないだろうか。
心よりご冥福をお祈りいたします。合掌。
(文=池内ひろ美/家族問題評論家、八洲学園大学教授)
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