韓国の在特会、またはネオナチ!? 差別的保守思想サイト「イルべ」が台頭
韓国ではインターネットサイト“イルベ(日刊ベスト貯蔵所)”が、差別的な傾向を強め、社会的な非難を浴びはじめた。
一体、イルベとはどのようなサイトなのか?
「もともと、DCインサイドという大手ポータルサイトがあったんですが、運営陣が削除した過激な書き込みや掲示物を保存する人たちが現れました。その後、彼らは閉鎖的で差別的な、自分たちだけのコミュニティーを作っていったのです。現在イルベは、韓国社会の問題児になっています」(韓国新聞社記者)
2012年には、月間閲覧者数400万人以上、PVにいたっては10億を超えるなど、ここ数年で急速に拡散したイルベだが、サイト内では差別的な書き込みが常態化している。ただ日本やドイツなどの極右勢力と異なるのは、外国人に対する排外主義的な発言よりも、韓国国内の民主化勢力および野党支持層を卑下することに焦点が置かれている点だ。
「韓国で民族主義的な立場に立って民主化を主導してきたのは左派。おもしろいことに右派は独島(竹島)などの外交問題が勃発すると一斉に黙りはじめる。そのような右派の事情を反映してか、イルベは外国人排せきを訴えるよりも、民族主義や民主化を打ち出す層に対する差別的な書き込みを強めています」(同)
たとえば、イルベユーザーか好んで使う「エイ」という隠語。これは、全羅道に住む人々を蔑む言葉だ。1980年に軍事独裁政権に反対した「5.18民主化運動」の舞台となった全羅道では、伝統的にエイを使った料理が親しまれてきた。イルベユーザーたちは、運動で殺された人たちの死体からエイの匂いがしたという話を作り上げ、差別を煽っているのだ。
日本の実情に即して分かりやすくたとえるならば、沖縄で米軍基地設置の反対運動を行った人々に、蔑称をつけて蔑むようなものとして理解できる。もしくは、在特会のヘイトスピーチが原爆被害者にまで及んでいる点などと共通性があるのではないか。
そもそも韓国の保守または右派とは、“日本統治下の既得権益層=反共産主義=反北朝鮮=親米=独裁政権支持層”などを指す。逆に“植民地既得権益層の排除=反日”や“脱冷戦構造=反米” “独裁政権反対=民主化”などを主張するのは、左派もしくは革新勢力側、民主党ら野党という構図がある。
イルベは、独裁政権時代への回帰思想や、民主化を否定するような差別的な内容を繰り返し書き込むことで、保守層の“隠された本音”を代弁していることになる。イルベが韓国の“超保守”サイトと呼ばれる所以が、まさにそれだ。
多かれ少なかれ、民主主義や左翼を否定する過激な保守派はどこの国にも存在する。しかし、批判が高まる理由はもう少し別な点にある。きっかけは、イルベユーザーが、韓国公安のバックアップを受けた“世論操作部隊”という説がクローズアップされはじめたからだ。言い換えれば、極右ネットユーザーを利用した、公安による政治介入疑惑が批判の対象になっているのだ。
事件は、昨年の大統領選挙以前まで遡る。
10年頃、公安院長であったウォン・セフンが、イルベユーザーらネット右翼を“書き込み”部隊として教育、野党に対して大々的なネガティブキャンペーンを行うように指示したという疑惑が報じられた。野党の調査によると、公安による介入は限りなく“クロ”に近い状況で、実際に司法処理が迫っているとも言われている。
「もしそれが本当なら狂気と言わざるをえない。明らかな選挙違反ですよ。公安の政治介入が禁止されているのは子供でも知っている」(韓国新聞社記者)