このように国有地の払い下げは、一括支払いが原則であるなかで、貸付契約にしたということ自体が異例であり、前例のない契約の決裁を担当部署から取るためには、本件の特殊性や特例措置であることを強調し、昭恵氏の情報を記載する必要があったのであろう。その点は、当サイトでもすでに報告した。
それにしても、決裁原本の昭恵夫人に関する記載は、驚く内容である。朝日、毎日、東京の各紙が一面に見出しとして取り上げていたが、昭恵氏の「いい土地ですから前に進めてください」「学園の教育方針に感涙した」との記述が決裁原本に記載され、あたかも絶対権力者の発言のように取り扱われ、官僚たちが国有財産の貸し付けから売却へと進めていったことが見て取ることができる。
この改ざんについて、安倍首相はもちろん謝罪するとともに、財務相の麻生氏も「ゆゆしきことであり誠に遺憾。深くおわび申し上げる」と陳謝した。 しかし、安倍首相は財務省のせいにし、麻生氏は「財務省の一部(理財局)がやったこと」「最終責任は(書き換えを指示したとされる当時の財務省理財局長で前国税庁長官の)佐川(宣寿氏)」と責任転嫁している。
財務省の調査によると、改ざんは財務省理財局の主導で行われ、決裁文書を国会に提出した当時の理財局長だった佐川氏の国会答弁に合わせるために行われたとされる。改ざんがあったのは2014年から16年に近畿財務局が作成した、国有地貸付契約や売買契約など計14件の決裁文書。17年2月末以降に理財局の一部職員によって改ざんが行われた。理財局で作成した決裁文書(1文書)は、電子データの履歴から4月4日に改ざんが行われていたとの発表がなされている。
森友学園への国有地払い下げで大幅な値引きが問題となり、佐川氏らが国会答弁に立っていた時期だった。麻生氏は「佐川の国会答弁に合わせて書き換えたのが事実だ」と言明。しかし、もし2月末に改ざんしたとすれば、佐川氏が踏み込んだ答弁を行ったのは同年3月であり、不自然である。
【表2:この間の経過】
3/2(金) 朝日新聞、書き換え疑惑をスクープ。国会で川内博史衆院議員の質疑要望に、財務省は6日に返答すると答弁。
3/5(月) 国交省、書き換え前の決裁原本のコピーを財務省に渡す。財務省公表せず。また同時に官邸にも報告。
3/6(火) 財務省、ゼロ回答。首相に書き換え事実伝達
3/7(水) 自公幹事長も文書提出要求。近畿財務局の職員が死亡
3/8(木) 財務省、再度ゼロ回答
3/9(金) 佐川氏、国税庁長官を辞任。前職員の死亡が報道される。
3/10(土) 財務省、書き換えを認めるとの報道が流れる。
3/12(月) 財務省、14文書約300カ所の書き換えを報告