――その悩みに対する答えは出ましたか。
朴 昔から、「日本と韓国にかかわる仕事をしたい」「貿易や法律に関係する仕事をしたい」と思っています。民団の在日韓国青年会や学生会も日韓にかかわる仕事ですから、そういう意味では「夢がかなった」という充足感があることも確かです。
私たちは韓国人と日本人の両方の属性を持っているわけで、「その要素を大切にしたほうがいい」と呼びかけています。たとえば、日本社会で暮らしていると、通称名などの関係で韓国人の属性が沈黙してしまう。本人が納得していればいいのですが、そうではない人もいるでしょう。そこで、民団や在日韓国青年会にかかわることで、韓国人としての思いが強くなってくるかもしれません。
――今は、在日韓国・朝鮮人も多様化していますね。
朴 そうです。多様化しているからこそ、私の生き方も在日韓国・朝鮮人のひとつのケースとして見てほしいのです。1世の時代とは違い、今や在日韓国・朝鮮人のルーツは多様性に富んでいて、バックグランドも変化しています。今、在日韓国・朝鮮人が国際結婚をする割合は全体の90%といわれています。複数国籍者や日本国籍者が増えるなかで、在日韓国・朝鮮人の定義は既存の枠には収まりません。
ヘイトスピーチはなぜ生まれてしまったのか
――先日には、アメリカ在住の同胞にもお会いしたようですね。
朴 ロサンゼルスで1.5世のデービッド・リューさんにお会いました。韓国系アメリカ人として市議会議員に当選した方ですが、その地域の居住者は80%が白人です。これは、私にとって衝撃的でした。一方で、なぜ日本社会は外国人に地方参政権を付与してくれないのか。視野狭窄だと思っています。
――外国人参政権の付与については、いまだ賛否両論があります。一部の日本人には「付与すると、外国人に地域を乗っ取られるのでは」という懸念もあるようです。
朴 見えざる敵におびえて布団の中で震えている、ということですか。在日韓国・朝鮮人に限らず、参政権が付与された外国人は「地域を良くしよう」という合理的な発想をすると思います。
偏見がはびこっているのは、本当にひどいことです。最近、問題なのはヘイトスピーチ。これは、もともと「在日韓国・朝鮮人は特権を享受している」という主張の下で生まれ、日韓関係が不安定化すると過激になる傾向があります。