――70~90年代は就職や結婚に関して差別があり、受け入れる側の日本社会にも問題がありました。一方で、今はヘイトスピーチを行う団体が誕生しています。
朴 しっかりと分析したわけではありませんが、やはり社会不安と経済不安が大きいでしょう。80年代には「いい大学にいけば、いい会社に就職できる」という神話がありました。しかし、バブルが崩壊し就職氷河期が到来すると、社会不安や格差が広がり始めました。そして、社会から切り捨てられた人たちのなかには「在日特権」を信じる人も出始め、マイノリティである在日韓国・朝鮮人などに対してヘイトが向けられるようになったのです。
起業家や芸能人も多い、在日韓国・朝鮮人の才覚
――聞きにくいことですが、差別に関して実体験はありますか。
朴 大阪から東京に来たので、学校では最初「お前、関西人だろ」と言われ、その後は「お前、韓国人だろ」と言われました。それでけんかしましたね。特別ホームルームで、先生が「そういうことは言ってはいけません」と注意する場面もありました。出自について差別的な扱いを受けたのは、それだけです。
――在日韓国・朝鮮人には起業する方も多いですが、なぜでしょうか。
朴 韓国人と日本人のビジネススタイルには、大きな違いがあります。ひとつは、「チャンサ」(商売)といわれる感覚で、これは日本人にはありません。韓国人は「ポッタリチャンサ」(行商人)に代表されるように、個人の才能や力量で道を開く人が多く、個人事業主志向が強いといえます。一方、日本人は集団性を重んじ、ビジネスにおいても同様です。在日韓国朝鮮人は、かつては個人事業主が多かったですが、今は8~9割が会社員です。
――芸能界で活躍する在日韓国・朝鮮人も多いです。
朴 かつての日本社会では就職に不利なケースが多く、自分の才覚や才能を武器に芸能界へ進み、タレントやアイドルとして活躍する人も多いと聞いています。これは、ほかの業界でも同様です。
――今後の目標はなんでしょうか。
朴 青年会には、さまざまな考え方が共存していていいと思っています。それらを尊重し、これからの在日韓国・朝鮮人の方向性を示していければと思います。私は子どもの頃から日韓を往来していたため、韓国語が話せます。そのため、海外の同胞と韓国語で会話することで視野が広くなりました。同じように、多くの在日韓国・朝鮮人が海外の同胞と深くつながってほしいですね。
これからも、海外の同胞とは親睦、交流、連帯を図っていきます。ある先輩は、「我々は、いつかは華僑やユダヤを超える民族になる」と言っていましたが、韓国人は世界から尊敬される民族でありたいと願っています。
(構成=長井雄一朗/ライター)