しかし、開会式後のシャトルバス乗り場には、終了から1時間以上が経った深夜になっても、長い列ができていた。翌日以降の競技会場でも、シャトルバスが30分以上経ってもこないために、来場者とボランティアがもめている場面にも遭遇した。
一方で、平昌の組織委員会は、選手や障害がある人の移動に力を入れていた。リフト付きのバスやスロープ付きのミニバンなどの車両を180台以上確保。多少の混乱はありながらも、用意した車両で対応ができたようだ。この移動への対応も、平昌パラリンピックが成功したと評価される一因になっている。
パラリンピックの参加選手の規模は、冬季に比べて、夏季は10倍近くになる。平昌では参加選手が約570人で、そのうち車椅子利用者は200人。これに対して、東京2020では選手が約4500人、車椅子利用者は約2000人と予想される。東京2020でも選手の移動に低床バスなどを活用する方針で、どのように調達するのかは、これからの課題だ。
「国立競技場駅」のエレベーターが使えなくなる?
東京2020で心配なのは、観客の移動だ。東京2020オリンピック・パラリンピックでは、基本的には会場の最寄り駅まで鉄道を利用してもらい、駅からは徒歩で会場にきてもらう計画になっている。しかし、障害のある人、高齢の人などの移動については、現時点では大きな懸念がある。
1つは駅のエレベーター。新国立競技場の収容人数は6万8000人だが、最寄り駅の一つ、都営地下鉄大江戸線の国立競技場駅には、地上と改札口を結ぶエレベーターは現在1つしかない。しかも、エレベーターの内部は狭い。車椅子が2台入るのも難しい広さだ。
エレベーターが狭いのは、都内のどこの地下鉄の駅でも言えることだ。また、あとからエレベーターがつくられた駅では、地上に出るエレベーターが、改札から遠い場所につくられているケースもある。
東京都交通局によると、今後国立競技場駅など数カ所で、現状のものよりも倍の大きさのエレベーターを1基増設することにしている。しかし、それで大丈夫なのかどうか、シミュレーションした数字があるわけではない。
さらに国立競技場駅には、もう一つ大きな懸念がある。平昌では競技会場周辺がかなり広い範囲にわたって、金網で囲まれていた。大会期間中、競技会場周辺はセキュリティエリアとなり、来場者はセキュリティゲートで手荷物チェックを受けて、金網の内側の会場に入っていた。