1.はじめに
2月1日、国立天文台は2019年(平成31年)の暦要項を発表しました。国立天文台の発表によりますと、同年中の国民の祝日は15日となるそうです。これを聞いて、「15日も会社を休める!」と思った人もいるかもしれません。しかし、実は法律から考えると15日「しか」休みがないというのが正しい認識になります。
その理由は、「国民の祝日に関する法律(以下、祝日法と称します)」は、全部で16日の祝日を国民の祝日として定めています。そして、2019年中は、なんと、このうちの一つである「天皇誕生日」が存在しません。これは、祝日法が制定されて初めての出来事になるそうです。
しかし、なぜ法律に定められている祝日がなくなるのでしょうか。この問題を考えるうえで問題となるのが、今回のテーマである祝日法と2017年(平成29年)6月16日に公布された「天皇の退位等に関する皇室典範特例法(以下、皇室典範特例法と称します)が深く関係しています。
今回は、天皇誕生日がなぜなくなるのか? そして私たちの生活にどのようにして影響が及んでいくのか、法律の仕組みを解説しながら検討していこうと思います。
2.そもそも「国民の祝日を定める法律」とは?
祝日法とは、1948年(昭和23年)に制定された法律のひとつです。たった3条しかない法律ですが、元日や海の日、春分の日などの祝日を定める国民にとってとてもうれしい法律です。
この祝日法は、憲法に関する法律として分類されると考えられています。日本国憲法は、国民の幸福を追求する権利を定め(憲法13条)、健康で文化的な生活を送れるように生存権を定めています(憲法25条)。他方、祝日法1条は、同法が立法されたのが「よりよき社会、より豊かな生活を築き上げるため(略)祝い、感謝し、又は記念する」ことを目的としています。この立法の目的から理解できるように、祝日法は、憲法の幸福追求や文化的な生活といった要請を受けた法律ということができます。
このうち、今回問題となった天皇誕生日は、祝日法2条に定められており、「天皇の誕生日を祝う」ものとして規定されています。この日が祝日となるのは、日本国憲法が国民統合の象徴として天皇を位置付けていることによると考えられます。