休日は、就業規則に必ず定められなければならない項目とされています。当然、休日をいつにするかは雇用主の判断となりますが、この「就業規則」に「国民の祝日」も休日に含めると雇用主が定めたことではじめて、国民の祝日が、みなさんの休日になるのです。
祝日法が定める16日間の「国民の祝日」を皆さんが休むことができるためには、このようにいくつもの法律や規律があるからこそ実現されているものなのです。
4.今回の国立天文台の発表について
そもそも、なぜ「国立天文台」が発表するの? という突っ込みもあるところですが、国立天文台の発表に戻ると、この発表の裏には、天皇陛下の退位に基づく立法が深く関係します。
すなわち、2016年8月8日になされた天皇陛下の生前退位に関する「おことば」があり、その実現のために国会が制定した皇室典範特例法の施行に伴い、新天皇即位による天皇誕生日も変更されることになりました。
では、なぜ「天皇誕生日が消える」ことになったのでしょうか。
まず、新天皇(現在の皇太子)の誕生日は2月23日ですから、新天皇の即位の日以後は、その日が天皇誕生日となります。また、皇室典範特例法の施行に伴う改正祝日法の施行も新天皇即位後とされています。そして、現在、即位の日については、5月1日となるとされていますから、そのときには、すでに天皇誕生日を経過してしまっていることになります。そのため、天皇誕生日が現れないという現象が生じることになるのです。
これは法的にも同じことが言えます。すなわち、新法が制定された場合には、原則として法律不遡及の原則、すなわち法律が過去の時点に遡ることがないという効力が働きますから、天皇陛下が即位なされても、法律的にも2月23日が天皇誕生日だったということにはならないのです。そのため、個々の法律で規定があったり、就業規則であったりでいくら「国民の祝日は休日」と定められていても、私たちの休日が1日減ることになるというわけです。
なお、今日の慣例に従い、現在の天皇誕生日が新たな祝日となるかについては、皇室典範特例法との関係では、現在何も定められていません。ではすぐに定められるかというと、別の問題が生じることになります。例えば、直近の改正である海の日制定の際に、新たなに休日が定められることによる経済的影響が懸念されており、新たな祝日になるかは、かなり先の話になりそうです。
5.最後に
私たち国民の生活を支えている法律として、日々行う売買契約や賃貸借契約を定める「民法」や、殺人罪や窃盗罪を処罰する「刑法」など種々の法律が存在します。これらが制定され、私たちの生活が法律により規律されているのは、我が国が「法治国家」であるといえるでしょう。
我が国の法律には、いわば常識的なことを規律する法律もあれば、難解なものを規律する法律もあります。「刑事事件とか離婚とか弁護士の先生にお世話にならない限り、法律なんて無縁だわ」と思っていても、私たちの生活には、法律が欠かせないのです。
ぜひ、みなさんも日々のニュースを通じて、法律のこと、そしてその面白さに関心を寄せてみてはいかがでしょうか?
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士、宮澤裕登/早稲田大学大学院法務研究科2年生)