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暴走する介護保険…53サービス乱立で「共食い」状態、介護施設に淘汰の波

文=編集部

介護保険サービス、細分化のツケ

 さらに基本型にとどまることも安泰ではない。次回(21年度)介護報酬改定で、25年に向けた在宅復帰誘導策として基本型に基本報酬の引き下げなどのメスが入る可能性を想定すれば、最低でも加算型を取得しないと、老健経営は厳しくなるのではないか。

 競合サービスも登場した。今年4月に介護保険サービスとして創設された介護医療院である。介護医療院は医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設で、病院や診療所からの転換が想定されている。老健との重複が考えられるのは、評価項目の「要介護4又は要介護5の割合」「喀痰吸引の実施割合」「経管栄養の実施割合」にかかわるサービス。利用者にとって介護医療院は医療機関内の施設という安心感をもてるため、参入次第では老健の有力な競合先になり得る。

 こうして老健がふるいにかけられる時代に入ったが、こんな見方もある。

「要介護者と家族が望んでいるのは手厚い介護サービスの提供であり、老健というカテゴリーを望んでいるわけではありません。手厚いサービスを受けられるのなら、サービスカテゴリーへのこだわりはないと思います。老健というカテゴリーの存続を望んでいるのは老健関係者だけではないでしょうか」(厚労省OB)

 要は、介護保険サービスを細分化し過ぎたツケが回ってきたのだ。ニーズの多様化に対応した制度設計を重ねて新サービスが創設されてきたともいえるが、その挙げ句に「介護保険制度はツギハギだらけの中古家屋のようになってしまった」(自治体関係者)。しかも、国の財政悪化で介護報酬財源が抑制されるなかにあって、財源をめぐって25種類53サービス同士が共食いをし合うというジレンマを引き起こしているのが実情だ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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