表現・メディア関係者が反対アピール
迷惑防止条例やデモ規制の現状を見れば、10月5日の本会議で可決されようとしている「人権条例」は、「地獄への道は善意によって舗装される」という事態になりかねない。人権を盾に、行政が言論や表現活動に介入する余地を与えるからだ。
そのため10月1日、都庁記者クラブで「東京都人権条例に反対する表現・メディア関係有志の緊急アピール」が発表された。
田島康彦・早稲田大学非常勤講師(元上智大学教授)、服部孝章・立教大学名誉教授らメディア研究専門家をはじめ、元雑誌編集長、フリージャーナリストら11名(9月30日現在)が緊急アピールの賛同人に名を連ねている。
アピールの趣旨は「条例案は差別的言動を理由に表現の自由を不当に侵害し、自由な言論やジャーナリズムを脅かしかねないと考え、その成立に強く反対し、提出の取り下げを求めたい」に尽きる。
条例案は3章から成る。
第1章(2条)オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現
第2章(3条)多様な性の理解の推進(LGBT理解の促進)
第3章(11条)本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進(ヘイト言動規制)
1章や2章には具体的な内容がなく、条例案のメインは3章の差別的言動に関するもの。これは2016年に成立した、いわゆる「ヘイトスピーチ規制法」を実現させる一貫として位置づけられている。
差別的言動の解消のための施策の柱は2つ。
第1に、知事は「公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止するため、公の施設の利用制限について基準を定める」(11条)
第2に、表現活動が差別的言動に該当すると認められるときは「表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずる」(12条)
言論表現への規制を都知事に「白紙委任」する危険
驚くのは、知事が公の施設利用を制限するための「基準を定める」ということは、イコール条例には「基準がない」ということだ。田島氏は記者会見で、こう指摘した。
「6月4日付の条例概要では、差別的言動の蓋然性の高さや施設の安全確保の危険性などの要件が付されていましたが、出てきた条例案では要件がまったくない。つまり、知事に白紙委任してしまうのです」