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伊調馨と田南部コーチ、二人の行動がレスリング協会内で問題視…「目のやり場に困る」

文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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 氏は例を挙げる。

「07年のアジア選手権で、私は早い段階から伊調選手の代表入りを決めていました。しかし、馨は姉の千春選手とともに『出ない』と言い出し、困りました。怪我だということでしたが、治療する期間が十分にあったにもかかわらず、すぐに欠場を決めたのです。オリンピックの前年でしたので、ベストメンバーの派遣は上層部からの命令でした。(伊調選手が所属する)ALSOKの監督にも説得をお願いし結局、故意に不戦敗しました」

 事前に戦意のないことを告げてマットに上がり、主審に相手の手を挙げてもらったのだ。エントリーはしないと後の世界選手権の出場資格を失うからだが、栄氏は続ける。

「翌年の北京五輪の2カ月後に東京で開かれた世界選手権でも、彼女が突然、『出ない』と言い出した。代表は数カ月前に決まっていて、五輪メダリスト全員の出場をテレビ局が売りにしていたので、協会は困り果てました。浜口京子選手や(吉田)沙保里なども五輪直後で気乗りしなかったでしょうけど、出てくれました。伊調選手は『出ない』の一点張りで、協会幹部が必死に懇願しましたが無視されたのです」

IDカードを持っていないはずの田南部コーチが

 2016年のリオデジャネイロ五輪について、栄氏は驚くべき事実を打ち明けた。

「IDカードを持っていないはずの田南部コーチが、馨が試合に出る直前のウォーミングアップ会場にいたのを見ました。ワンデーパスでもあるのかと思いましたが、コーチたちも驚きました。他人のカードを不正に使うでもしなければ入れないはずでした。私もすぐに選手の試合があったので聞けなかった」

 IDカードを所有する人は極めて限られていた。目撃したあるコーチは「驚いたが、伊調選手と二人だけの世界を作っていて、僕らも問うことができなかった。トレーナーからこっそり借りたと聞きました」と話している。

 ゲートの検査官には日本人の顔の区別がつかなかったのかもしれないが、国際テロの懸念の中、五輪会場は厳重な警戒対象だ。他人に成りすましたのなら大問題である。

 生来が神経細やかで気の弱い栄氏。騒動以来、「悔しくて寝られない。このままで終わりたくない」と訴えていたが、記事を出そうとすると「待ってほしい、(至学館大学の)谷岡(郁子)学長の許可を」「協会専務に見せてから」などとストップがかかる。他者を批判した部分など「削ってほしい」の繰り返しだった。「そんなに気遣っていたら向こうの思うつぼ」と叱咤激励した。

 栄氏が名誉棄損で田南部コーチを名古屋地裁に訴えた裁判は、11月から口頭弁論が始まるが「彼と戦うというよりも、パワハラについて世間の人の誤解が解ければいいんですよ」と言う。思いのたけを吐き出してすっきりしたようだった。

 一方の伊調選手は先に静岡県で行われた全日本女子オープンに登場、2年以上のブランクを乗り越えて圧倒的な強さで優勝した。「おめでとうと言いたい。今後、東京五輪の出場権を勝ち取り5連覇を目指してほしい。彼女が私の誇りであることに変わりはありません」と栄氏。

 34歳で体を絞って階級を落とせる伊調選手も立派だが、この大会ではまだ真価はわからない。12月の全日本選手権に注目したい。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

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