有価証券報告書の虚偽記載の容疑で10日に再逮捕されていた日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏について、東京地裁は20日、東京地検特捜部による勾留延長の要求を認めない決定をした。東京地検はこれを不服として裁判所に準抗告したが、裁判所は却下。すると東京地検は21日、2008年に私的な投資で生じた約18億5000万円の損失をゴーン氏が日産に付け替えたとして、会社法違反(特別背任)の容疑で再逮捕し、自宅へ家宅捜索に入った。
裁判所の決定を受けて、検察が素早い動きをみせているが、刑事事案に詳しい弁護士は語る。
「通常、勾留延長の請求は無条件で裁判所に認められることが大半ですが、本来1度の逮捕ですませられるところを、あえて2回に分けて逮捕し、さらには何度も勾留の延長を求める検察に対して、国内外で批判が強まっていることもあり、さすがに裁判所も認めるわけにはいかなかったということでしょう。今回の特別背任罪での逮捕による勾留も、延長が認められる見込みはほぼなくなり、さらには起訴による勾留も、もしゴーン氏の弁護士が保釈請求をすれば、裁判所が認める可能性も高い。そうなれば、ゴーン氏はあと10日間ほどで保釈されることになるわけで、検察も相当焦っているのは明らかです。さっそく今日、自宅へ家宅捜索に入ったのも、まさにその焦りの表れです」
特捜部は先月19日にゴーン氏を「2011年3月期~15年3月期の有価証券報告書の虚偽記載」の容疑で逮捕し、今月10日には「直近3年分の有価証券報告書の虚偽記載」の容疑で再逮捕し、事実は同じで期間だけが異なる容疑で逮捕を繰り返した。そして、今回の特別背任罪での再逮捕となったわけだが、検察が長期にわたり身柄を拘束できる日本の刑事手続きに対し、海外からも疑問が向けられている。
「特別背任罪の容疑の内容は、10年も前の投資であり、ゴーン氏の海外渡航中の期間は除外されるため公訴時効(7年)は成立しないというのが検察のロジックですが、さすがに起訴は無理でしょう。つまり、特別背任罪での逮捕は明らかに勾留が目的です。ゴーン氏の自白が取れないなか、ここまでして勾留を長引かせようとしているということは、検察もかなり行き詰まっているということです。長期勾留を使って自白を取るというのは、検察の常套手段ですが、一連のゴーン氏逮捕劇によって、日本の刑事手続きの“人権蹂躙司法”“人質司法”が海外から批判を浴びています。逮捕に踏み切った検察にとっては、想定外の事態といえます」
これを機に、司法制度の見直し機運が高まりそうだ。
(文=編集部)