和歌山市も多賀城市同様の“密談”か
仮に、14年11月の武雄市視察が、巨額の再開発プロジェクトの目玉となるツタヤ図書館誘致を前提としたものだった場合、どのような点が問題なのか。
その後に行われた、新図書館建設に向けた市民へのアンケートや説明会、各種イベント、新図書館計画の立案・基本設計発表、指定管理者選定コンペなど、CCCが新図書館の運営者に選ばれるまでのプロセスは、すべて茶番だったことになる。
和歌山の視察団が武雄市を訪問した前年の7月、和歌山市と同じく、後にCCCを指定管理とすることを決めた宮城県多賀城市で、内部告発により、隠蔽されていた“武雄市を職員が視察した際の復命書”が暴露された。
そこには、CCCのスタッフと市の職員が、まだ指定管理者の募集さえしていない段階なのに、新図書館開館までの議会スケジュールなどを綿密に打ち合わせていた記録が残されていた。多賀城市が、一民間事業者とあからさまに癒着し、公募もせずに委託先を決定していた構図が浮き彫りにされた格好で、その不透明なプロセスが週刊誌等で厳しく批判された。
そのため、和歌山市でも同様の“密談”が行われたのではとの疑いの目が向けられているのだ。
新図書館を目玉とした和歌山市駅の再開発プロジェクトの総事業費は、123億円。そのうち少なくとも64億円が税金から補助金として南海電鉄に支払われる。建物完成後、図書館部分を施主の南海電鉄から和歌山市が30億円で買い取ることも決まっており、公費負担の合計は94億円にも上る。
それにもかかわらず和歌山市は、プロジェクトに関する会議内容の情報開示請求に対し、97%も黒塗りした状態で開示しているため、果たして南海電鉄やRIAが公平・公正なプロセスで選定されたのかを検証することができない。
和歌山市は、CCCによる開業準備にかかるシステム費用だけで3億円をすでに承認。さらに年間の指定管理料として毎年3億円をCCCに払わないといけない。開業後数年は、もの珍しさで人が押し寄せるかもしれないが、社会教育施設としてではなく商業施設として開発している以上、やがては飽きられていく可能性は高い。
そもそも、駅前再開発を含む和歌山市が策定している社会資本総合整備計画を見ると、総事業費328億円かけた計画の最終目標として掲げている人口減少抑制効果は、たったの835人にすぎない。
湯水のように税金を垂れ流した結果、あとには何も残らないとしたら、いったい誰がその責任を取るのだろうか。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)