では、新装置にはほとんど効果なしということなのだろうか。
「新装置を導入して、国交省と警察が一緒に取り締まりをするということがニュースや新聞などで全国報道されれば、すべてのドライバーに対する“車検を受けましょう”という啓発活動の一つにはなるはずです。いくつものメディアで全国報道されれば、費用換算すれば数億円以上の宣伝効果となるでしょう。また、街頭検査によって停止を命じられ警告を受けた人は、その後、高確率で車検を取るでしょうから、後手ではありますがそういう意味での効果は見込めます。ですが、国交省と警察の人員を投入しなくてはいけない街頭検査を、どれだけの規模で実施していけるのかについては、まだ未知数と言わざるを得ません」(同)
最後に、一般ドライバーにとっての影響を聞いた。
「当然ですが、車検切れではないきちんと整備された車両に乗っている大多数のドライバーには、基本的には関係がない話です。仮に車検切れ車両を運転してしまっている人がいたとしても、偶然街頭検査に遭遇する確率は低いと思います。ですから身も蓋もない言い方になってしまいますが、この新装置の話題は、ほとんどのドライバーの方々には無関係な話なのです。
とはいえ、車検が切れていて整備が行き届いていない危険な車が、今も約20万台も公道を走っているというのは事実であり、その数が減っていくことは、ひいては一般ドライバーが危険な事故に巻き込まれる可能性が減っていくということでもあるでしょう」(同)
車検切れの危険車両が減っていくことにつながるのであれば、街頭検査の実施は積極的に行ってもらいたい。だが、国交省が警察に全面的に依頼すれば人員コストが大幅に削減できる街頭検査に、わざわざ国交省の担当者が現場に出るということには、“非効率的なお役所仕事”感が否めないのも事実である。
(文・取材=後藤拓也/A4studio)