現在の韓国国防相は“知日派”
こうした韓国政府の態度には、韓国内の保守派の間でも危惧の声が上がっているという。ある韓国の保守系メディアの記者が、そうした声を代弁する。
「もともと市民活動家出身で、韓国の保守政権と対峙してきた文在寅大統領の頭には南北関係の融和しかなく、日韓関係は二の次、三の次。韓国軍は北朝鮮の脅威を前に韓米日の関係を重視してきましたが、今は青瓦台(大統領府)に人事を押さえられ、意見を言うことができないんですよ」(同記者)
韓国では今年1月、青瓦台の人事担当行政官が軍の幹部人事を話し合うために陸軍トップの参謀総長をカフェに呼びつけ、その後に人事資料を紛失していたことが明らかになり、「大統領府による軍への人事介入」が改めてメディアの話題を呼んだ。実際、文在寅大統領は就任後の最初の軍人事において、韓国軍の8人の大将のうち7人を交代させるなど、軍に対する介入姿勢が目立つ。
ちなみに、現在の韓国国防相の鄭景斗氏は空軍出身だが、実は航空自衛隊の幹部学校に2度も留学した経験のある知日派。にもかかわらず今回のレーダー照射問題では、「日本の挑発への強力な対応」を指示するなど強硬姿勢が目立っており、「青瓦台に首を押さえられているから」(前出の韓国メディア記者)という見方がもっぱらだという。
駐日韓国大使は青瓦台に“丸投げ”
こうした文在寅政権の“情実人事”が、日韓関係の悪化を助長しているという声もある。文大統領に任命された李洙勲・駐日韓国大使は学者出身で、文氏が側近として仕えた盧武鉉大統領(2003〜2008年に在位)の時代には北朝鮮訪問の特別随行員も務めた南北問題の専門家。その後は文氏のブレーンを務め、文政権誕生後に駐日大使という「ご褒美」をもらった形だが、「日本に関する知識は乏しい」という批判が多いという。
「李大使は過去に慶応大学の招聘教授を務めた経験はあるが、日本語は話せず、日本の政治家と打ち解けることも少ない。日本政府から要求を受けても青瓦台に丸投げすることが多く、全権大使としてのパイプ役が果たせているかは疑問です」(日韓外交関係者)
レーダー照射問題でよくニュースに登場する、韓国国防省の眼鏡をかけた女性報道官の崔賢洙氏も、文政権下で任命されたひとり。韓国側にレーダーの情報開示を求めた防衛省の要求を「非常に無礼」と批判したことが波紋を広げたが、元々は韓国紙・国民日報の記者だ。韓国の国防省を担当した初の女性記者で、軍事を専門としていたというが、日本政府内からは「外交儀礼を知らず、発言が過激すぎる」といった批判も聞こえてくる。