それほど巨額の税金が使われる事業であるにもかかわらず、和歌山市と南海電鉄が公表しているのは、施工を担当する事業者の選定のみ。そのほかの計画・設計業務については、筆者のたび重なる開示要請を両者とも頑なに拒否し続けてきた。
しかし、当サイト上での一連の報道や、地元図書館サークルなど市民の粘り強い働きかけの結果、ついに市は2月4日に落札情報を開示するに至った。その情報を、筆者がこれまで入手してきた関連文書と照らし合わせてみたところ、談合疑惑が発覚したという経緯である。
和歌山市「業界では慣例的に行われている」
さて、この動かぬ証拠について、当事者はどう釈明するのだろうか。
まず和歌山市の担当者に問い合わせたところ、開示された資料に記載されている、資金計画入札日が16年8月1日であることは「間違いない」と認めた。一方、その1年半前の14年12月17日に開催された関係者会議の出席者欄に、この担当者の名前があったため「出席したのを覚えているか?」との問いには、「かなり前のことなので記憶にはないが、資料を確認したら、確かにその会議は開催されている」とあいまいな返答だった。
さらに、「その落札の2年前にRIAが資金計画をすでに発表しているのは、いったいどういうことなのか」と問うと、次のように釈明した。
「資金計画と一口に言っても、実際の再開発計画を正確に進めるうえでの正式な資金計画と、『だいたいこれくらいの費用がかかってくる』『こういった項目の費用が必要』という情報を関係者に説明する、ざっくりした資金計画がある。落札の2年前にRIAが発表したのは、その概算的な資金計画のことだ」
そのうえで、この行為はなんら問題ないとする見解を示した。
「再開発プロジェクトが立ち上がったばかりの頃に、コーディネーターがざっくりした資金計画案を作成して関係者に発表することは、業界では慣例的に行われている。不適切でもなんでもない。最初は“手弁当”で入ってくる事業者もいるほどだ」
もう一方の当事者である南海電鉄にも見解を求めたところ、こう回答した。
「14年12月17日の会議での資金計画は、正式に都市計画を策定する前に、当社がRIAにコンサルティングしてもらい、そのうえで都市計画とは別に“私案”として会議で発表したもの。都市計画は非常に複雑なので、当初ざっくりした計画を立てて説明することは必要だ。補助金とは別に、当社の独自予算で策定した。それを、内容に精通しているRIAに発表してもらった。RIAとは14年に契約している。何月何日に契約したかまでは言えない。少なくとも、RIAが調整会議に出席してくる14年7月までには契約している」
なお、RIAに対しても、事情を聴きたいと何度か連絡したが、いずれも「担当者がいない」とのことで、締め切りまでに回答を得ることはできなかった。