再開発プロジェクトを進める場合、正式に発注する前にコーディネーターが事業計画の素案を立てるのは、業界では慣例的に行われていると和歌山市の担当者は説明するが、一般の市民感覚からすれば、とんでもない非常識な行為に映る。
のちに入札に参加する予定の事業者の1社だけを特別待遇し、何年も前から役所の関係者会議に毎回出席を許され、なおかつ事業の計画を発表しているのだから、まさに「ズブズブの癒着関係」ではないのか。
ある図書館関係者も、こう言って呆れる。
「和歌山市の主張は、言いかえれば“業者との癒着は当たり前”ということになりかねません。『再開発事業では癒着は当たり前で、癒着とは言わない』と言っているように聞こえます」
ある国交省OBは、この事業プロセスの問題点をこう指摘する。
「このプロジェクトを始めるしょっぱながどうなっているかが大事です。大きな再開発になると、役所だけでは計画できないですから、当然、民間に構想や計画を依頼することになります。そのとき、指名でもオープンでもいいですが、『こういうことを考えているよ』という構想や計画を何社かにプレゼンしてもらい、それを審査して優れたところに決めるというのが、役所の基本的なルールです。今回、民間の南海電鉄が施主になっていますが、税金を使う公共事業である以上、その責任は同じです。東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場の設計に関して、コンペを行ったのと同じように、何社か参加してオープンで決めるわけです。公共事業では、『公平・公正』という原則を踏み外したら絶対にダメですよ」
今回のプロジェクトをスタートする時点では、なんのコンペも開催されておらず、いつの間にかRIAが関係者会議に出席している。
その異様さは、同様に駅前再開発プロジェクトの資金計画から設計業務をRIAが落札した山形県酒田市のケースと比べてみると一目瞭然だ。
酒田市の場合、17年1月に設計関連業務の入札が行われているが、その2年半前の14年6月に「酒田駅周辺グランドデザイン」策定者の一般競争入札が開催され、そこでRIAを正式に選定。その後に、設計関連業務をRIAが落札するという手続きが踏まれている。
和歌山市の場合は、事業全体のグランドデザインについての一般競争入札もなしに、いきなりRIAが関係者会議に出席している。それを「再開発プロジェクトでは、ごく普通に行なわれている慣例」という言い分は、到底通らないだろう。
なお、この談合疑惑が発覚した詳しい経緯については、次回に詳しく報じる。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)