「二軍で勉強してこい」愛のムチ
「初回に失点すれば、試合の主導権を奪われます。チームを指揮する監督の立場からすれば、試合序盤をゼロに抑えてくれるかどうかは、その後を勝負を左右する重要事なんです」(プロ野球解説者)
レイズのキャッシュ監督は昨季162試合中、なんと57試合においてオープナーを使い、結果90勝を挙げてみせた。昨季中盤以降、人材不足という苦肉の策から生じたこのオープナーというやり方を模倣するチームも現れたほどだ。
日本ハムは、短いイニングのみを託すというこの変則の先発起用法で、近年まったく戦力になっていなかった斎藤を使っていこうとしているのではないか。
というのも、そもそも、斎藤には弱点がある。長いイニングが投げられないのだ。ノックアウトされてきた試合を振り返ると、そのほとんどが2巡目以降に失点している。彼のピッチングの特徴は、ストレートはさほど速くないが、変化球は多彩……というもの。1巡目は変化球でしのげるが、その変化球の軌道を見せてしまった後の2巡目では通用しないというわけだ。
こんな斎藤評もある。
「短いイニングなら通用しそうなので、リリーフをやらせた時期もありました。しかし、斎藤は肩をつくる(登板準備)のに時間がかかる。リリーバーはすぐに準備ができないと務まりませんからね」(前出・スポーツ紙記者)
4月4日の楽天戦に話を戻そう。2回途中で交代を告げられたとき、斎藤は明らかに不服そうな顔をしていた。「まだ投げたい」と言わんばかり。しかし栗山監督は、目も合わせようとしなかった。栗山監督は選手思いの指揮官で知られている。オープナーでやるならばなおのこと、零封は絶対条件。「二軍で勉強してこい」という監督の愛のムチなのかもしれない。
通常、日本のプロ野球は6人の先発投手でローテーションを組むが、現在の日本ハムは、4番手以降の先発投手が実績に乏しい。「オープナー・斎藤」には、まだチャンスがある。
(文=美山和也)