アニシナーベが授かった予言
カナダとアメリカには、アニシナーベと呼ばれる先住民グループがいる。アニシナーベの人々は、自分たちが呼ぶタートル・アイランド(海ガメの島)、すなわち、北米大陸の東岸からやってきたと考えている。アニシナーベは、「落とされた場所から来た人々」や「善良な人間」を意味し、オタワ族、ソルトー族、オジブワ族、ポタワトミ族、オジクリー族、アルゴンキン族が含まれ、互いに文化的なつながりを持っている。
そんな彼らは、将来の世代に対する力強いメッセージである「七人の火の予言」を大切にし、その成就を待っている。それは、善良な者の生き方を教えた七人の予言者たちとの出会いによってもたらされたものであり、自分たちのホームランド(北米大陸)の運命だけでなく、全世界の運命にも関わっているという。
アニシナーベの人々は文書の記録は持たなかったが、その文化と伝統は貝殻玉のベルトに、言わば霊的にコード化して、幾世代にも渡って伝え残してきた。彼らにとって貝殻玉のベルトは自分たち種族の記録文書であり、重要な祭事等を記念するためにも用いられてきた。七人の火の予言も、そんな貝殻玉のベルトに記録され、伝えられてきたのである。
興味深いことに、彼らに知恵を授けた七人の予言者たちは普通の人間とは異なっていたという。人間の容姿をしていたが、燃えるように光を放っていて、人間にはない力を持っていた。それで、知恵を与えた存在は(七人の)火と呼ばれたのである。予言者たちは高度に啓発された霊的存在で、それぞれ異なる時期に海からやってきた。予言者の一人は海の底へと戻って行ったが、他の6人の霊的な師はアニシナーベとともに留まり、この世の真の価値を彼らに教えることになったという。
いったい、彼らが授かったメッセージとは、どのようなものだったのだろうか?
人類存続の道が示されていた?
アニシナーベの人々によると、最初の予言者は自分たちの土地にやってくる「色白の種族」について警告し、2つのグループに分かれるように言った。ひとつのグループは大陸の奥に行って隠れ、色白の種族が自分たちの意図を明らかにするまでそこに留まることが求められ、もうひとつのグループは新来者を兄弟として歓迎することが求められたのである。
次に、留まって「色白の種族」を歓迎する先住民たちは、彼らに注意を払うように予言者たちに警告された。たとえ新来者が微笑んでいても、彼らはなおもその地に死をもたらしうると予言者たちは言ったのである。
色白の種族に対する警告はさらに続いた。
「たとえ色白の種族が手に何も持たずにやって来たとしても、あなた方はなおも用心せねばならない。彼らは微笑んでいても、実際には死に神の顔を持っているかもしれない。彼らを安易に受け入れるのではなく、静観するのです。彼らの行動を見ることで彼らのことがわかるようになるでしょう。
もし色白の種族が死に神の顔をしてやって来れば、この土地の人々に大惨禍が降りかかるでしょう。あなた方に大きな苦痛が訪れるでしょう。生命の杯はほとんどひっくり返されるでしょう。
魚が死んで水が飲用に適さなくなれば、色白の種族がどちらの顔をしているのかわかるでしょう」
だが、色白の種族への警戒だけが伝えられたわけではない。
「もし彼らが兄弟の顔をしてやってくれば、あなた方は一つの家族となるでしょう。彼らの物質世界の知識とあなた方の霊的な知恵が一緒になれば一つの強大な霊的国家が生み出され、他の2つの種族(東洋人とアフリカ人と考えられている)が加われば、世界で最強の国家が生み出されるでしょう」
これをわかりやすく具体的に説明したのが七人目の予言者だった。彼の目は燃えるように輝いていて、北米先住民に対してだけでなく、色白の種族に対してもある重要なメッセージをもたらしたのである。
「7番目の火の時代に新しい人々が現れる。彼らは自分たちの先祖の足跡を遡って、これまでに失われてきたことを見つけ出そうとするでしょう。彼らは指導を求めて長老たちにアプローチするでしょう。
簡単な仕事ではないが、もし彼らが善良な心と純粋な意図を持っていれば、彼らは成功しうる。いくらかの長老は眠っていて何も言わず、他の長老たちは恐怖心から何も言えないでしょう。新しい世代は自分たちの探求に恐怖心を持ってはならない。
色白の種族は岐路に立つ。もし彼らが物質主義を突き進めば、彼らは破滅し、全人類も破滅する。しかし、色白の種族がこの土地の自然人と一緒に霊的な道を歩むことを選べば、彼らは再び国家――過去に存在したことのない最も偉大な霊的国家――を生み出すチャンスを得るでしょう。
この2つの種族の他に2つの種族が加わります。そして、彼らはともに8番目で最終の火、平和・調和・友愛の永遠の火を灯すことでしょう」
このメッセージはとても示唆的である。実のところ、北米及び中米の先住民のなかには類似した予言を持った種族がいる。また、20世紀に入り、彼らは西洋人にはない優れた霊性を持っていたことに白人たちは気付くようになった。そして、今やホピ族をはじめとした北米先住民が有する「平和に生きる知恵」や霊性を学ぶ白人が増えつつあるのだ。
そのような歴史を振り返ると、七人の火の予言は成就されつつあると同時に、成就されるように我々も心がける必要があるのかもしれない。
(文=水守啓/サイエンスライター)