(「Thinkstock」より)
東電再建への道筋が記されているのは、今年3月発表の「総合特別事業計画」。経営の透明化や合理化、取引の公平性を確保するなどの機構改革を掲げ、大幅なコスト削減を通して、2014年3月期の当期損益で1067億円の黒字化をめざす、としている。
しかし「旧経営陣が打ち出したコスト削減の方針は、現場にはほとんど浸透していない」と指摘するのは、東電を長年取材してきた経済誌記者だ。とりわけ燃料調達において、東電のムダ使い体質は改まっていないという。
「東電は、火力発電に使用する燃料……なかでも石炭や天然ガスを相場よりも高く買っているのです。石炭に関しては、アメリカの相場の倍近い値段で買うこともあり、取引を仲介する商社にカモにされているといっていい。新しい調達ルートを探すなど、民間企業では当たり前の努力を怠っているのは明白です」(経済誌記者)
事実、経済産業省の電気料金審査専門委員会は今月4日、火力発電に使用している燃料の調達価格が貿易統計と比較して2~6%ほど割高であると指摘。これに対し東電は「環境規制や灰の処分を考え、高品質な燃料を調達しているため」と、いかにも苦しい言い訳をしている。電気代の値上げを行っている最中だけに、東電のコスト意識の低さには批判が集まりそうだ。
2年後の黒字化を掲げながらも、遅々として進まない現場改革。現状は新体制になっても変わらないのではないか――そう指摘するのは先の経済誌記者だ。
「東電のガバナンスがうまく機能しない原因の一つは、会長、社長とは別に、経営改革を取り仕切る実力者がいる、という権力の二重構造にあります。その実力者とは、今回社外取締役に就任する1人で、支援機構理事兼事務局長の嶋田隆氏です」
経済産業省出身の嶋田氏は、かつては与謝野馨の秘書官を務めており、民主党・仙谷由人政調会長代行からの信頼も厚い。調整力の高さで知られ、東電と霞が関双方の意見をじっくりと聞くタイプとされるが、東電側は「経産省のスパイ」として嶋田氏への警戒心を隠さない。報道関係者の間では、嶋田氏のスキャンダルを狙って、東電側が探偵を雇ったとの話もまことしやかに流れている。