近年、“撮り鉄”と呼ばれる、電車の写真撮影を趣味とする人々の迷惑行為が頻繁にネット上で話題になる。
運行が廃止される列車のラストラン、新型車両の初走行、すでに廃止になった列車の臨時運行、希少な列車の試験走行など、特別な列車が走る際には、必ずといっていいほど鉄道ファンは集結する。鉄道会社が公式発表していない運行でも、ファンの間では情報が流れ、深夜・早朝問わず全国各地から多くの人がなぜか集う。
そのなかで、私有地や立ち入り禁止の土地に勝手に立ち入ったり、公共の立木の枝を折る、撮影ポイントを通過する歩行者や自動車の通行を妨害するといった迷惑行為がネット上に報告され、撮り鉄のマナーの悪さが批判を浴びることになっている。
もちろん、マナーを守って撮影している人も多くいるだろう。だが、あまりにも常識はずれな撮り鉄の姿が頻繁に報告されることで、撮り鉄=非常識といったレッテルが貼られるようになっている感すらある。
そんななか5月15日、東急目黒線の元住吉―武蔵小杉駅間の踏切で目撃された、衝撃的な光景が物議を醸している。Twitter上に投稿されたのは、複数の撮り鉄が踏切の遮断機によじ登って写真を撮る姿だ。
バインミー買いに行った帰りに東急東横線で激ヤバなのに遭遇してしまった。電車止まって運転手が怒鳴ってた。趣味は決して否定しないけど、一部の撮り鉄さん。 pic.twitter.com/I3mbgu1Nq3
— むらまさ (@CreepyCroquette) May 15, 2022
投稿によると、電車を止めて運転士が注意していたという。公道で交通の邪魔にならない場所から、フラッシュなどをたかずに列車を撮影する分には問題にはならないだろう。だが、遮断機によじ登るという常軌を逸した行為に、批判の声が殺到することになった。
警察には通報があったようだが、遮断機によじ登った人物らは確保されていない様子。東急電鉄が被害届を出したか否かは明らかにされていないが、仮に被害届を出した場合、当該人物たちは刑事訴追される可能性があるのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は次のように解説する。
「マイナーな法律ですが、『新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法』があり、(鉄道等の)設備を損傷したり設備の機能をそこなうおそれのある行為をした者は、5万円以下の罰金が科せられます(法第2条3項)。
遮断機という鉄道の設備によじ登れば、遮断機が使えなくなる(機能を損なう)おそれがあるので、罰金刑が科されることでしょう。証拠は十分なので、とっとと刑事罰を科すべきです」
刑事罰を科される犯罪となるかどうかも気になるが、列車の写真を撮るという個人的趣味のために列車の円滑な運行を妨げ、鉄道関係者や利用者など多大な人たちに迷惑をかける行為は、厳しく罰せられるべきだろう。
さもなければ、撮り鉄による迷惑行為はさらにエスカレートしかねない。歯止めをかける意味でも、目に余る行為は検挙してもらいたいところだ。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)