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神戸家裁、なぜ少年A事件記録を廃棄?裁判所「すべて紙で保管」ルールの限界露呈

文=Business Journal編集部
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神戸家庭裁判所の公式サイト

 少年法厳罰化の流れのきっかけのひとつとなった歴史的事件の事件記録が永久に失われた。中央省庁や国会のDXが叫ばれて久しい。しかし、「資料のデジタル化」「データバックアップの常識」が“司法界隈”ではまだまだ進んでいないことが明らかになった。

 神戸新聞は20日、記事『【独自】「少年A」の全記録、裁判所が廃棄 神戸連続児童殺傷、家裁「運用、適切でなかった」 内規に抵触か』を公開。当時14歳の“少年A”が1997年、神戸市須磨区で小学生5人を襲い、2人を殺害した連続児童殺傷事件の全事件記録を、神戸家庭裁判所が廃棄していたことを明らかにした。

 報道によると、廃棄されたのは「少年審判の処分決定書」「捜査書類」「精神鑑定書」など審議過程を検証できる文書一式。最高裁判所の内規では、史料的価値が高い記録の永久保存を義務づけている。神戸家裁は「運用は適切ではなかった」との認識を示しつつ、経緯や廃棄時期は不明としているのだという。

 しかし、この廃棄で、後世の法学者や法曹関係者による裁判の再検証が極めて困難になったのは間違いないだろう。

相次ぐ裁判資料の紛失

 しかし、裁判資料の廃棄は神戸家裁だけではなかった。千葉地方裁判所も保管していた判決文など58通を紛失し、誤って廃棄した可能性があることが19日に報じられていた。NHKの報道(『千葉地裁 判決文など58通を紛失 誤って廃棄した可能性も』)によると、同地裁は関係者に謝罪するのと同時に、「当時の関係者などから判決文などを借りてコピーし、保管していきたい」との方針を示しているという。

 事件記録の保存の必要性をかねてから訴えているジャーナリスト江川紹子氏は以下のように公式Twitterアカウントに投稿。20日は前述の神戸新聞の取材にいう[サ1] 応じた自身の見解に関しても投稿した。

紙の裁判資料は”かさばる”?

 司法記者経験の長い新聞記者は裁判資料の”記録媒体”について、次のように指摘する。

「刑事、民事ともに基本的に紙媒体での記録が基本なので、資料を保管するためのスペースや労力が必要になってきます。大きな刑事事件ともなると、その資料は膨大な量になり、端的に言って“かさばる”のです。

 裁判資料は重要度に応じて保管する期間を5~50年と定めています。しかし、民事を含めれば毎年相当量の資料が蓄積されるわけで、紙の資料を保管し続けていくのは非常に大変な作業なのです。紙質が劣化したら保存するために複写しなくてはいけないのも煩雑な作業だと思います。

 一方で裁判所で取り扱う裁判資料は、そこに記されている個人情報の観点から、慎重な取り扱いが求められます。裁判資料に限らず、政府や中央省庁の公文書も同様ですが、デジタルデータだと内容を改ざんされる恐れや、情報漏洩の危険性も指摘されるので難しいところがあります。しかし、データのバックアップや複製や検索、管理、整理が比較的容易で、保管場所の省スペース化も図れる裁判資料のデジタル化は、将来的に不可避だと思います。神戸連続児童殺傷事件の裁判記録が廃棄された背景には、ある意味で紙媒体での資料保管の限界が示されているのではと思いました」

最高裁「裁判所の記録は原本、複写とも紙での保管が原則」

 最高裁判所事務総局広報課の報道担当者は「今のところ全裁判所の記録は原本、複写とも紙での保管が原則になっています」と説明する。その上で、「裁判のデジタル化、いわゆる民事・刑事訴訟手続きのデジタル化の話が報道されているかとは思いますが、(資料のデジタル媒体でのバックアップなどについて)将来的にはそのように移行していく可能性はあるとは思います」と語った。

(文=Business Journal編集部)

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