山下 一般的に他の大学の学園祭では参加団体補助金というのがあり、学園祭に出る団体に大学から補助金が下ります。一方、早稲田祭には「参加団体分担金」という真逆の概念があり、早稲田祭に参加する団体にお金を払ってもらっています。
この分担金でまずは約1000万円を確保して、企業協賛による渉外収入やOB・OGなど校友の方、地域の方などから集めさせていただく支援金で1000万円、そして運営スタッフが1人当たり9000円の負担で約500万円で、合計2500万円となります。
–協賛企業には大企業も名を連ねていますが、企業協賛金というのは、運営スタッフが企業を回って資金協力をお願いしていくのですか?
山下 そういう場合もありますし、新規開拓もやります。
–企業側にとって、資金を提供するメリットはなんでしょうか?
山下 私たちは早稲田祭当日に各門付近のインフォメーションにて、カラーのパンフレットを5万5000部無料配布するのですが、そこに企業様の名前や広告を掲載させていただくため、そこに一定の効果を見いだしていただいていると考えております。
–パンフレットを有料化すれば、運営費の収入源になると思うのですが、なぜ無料配布しているのでしょうか?
山下 旧早稲田祭では、もともと有料だったパンフレットを無料化する過程で資金流用事件が起こり、それが理由の1つとなって1997年に一旦開催中止となったという過去があります。なのでパンフレットを自主的に集めた予算の中で無料配布するというのは、私たちのプライドでもあります。ちなみに5万5000部というのはものすごい量で、その費用は総予算の約5分の1くらいを占めますが、それを無料配布するというのは、「学生による自主運営」の象徴でもあるのです。
–早稲田祭当日の柱としては、校舎の各教室やスペースを割り振られた参加団体によるイベントと、大隈講堂前などに設置された大きなステージ上でのイベントという、大きく2つがあると思いますが、例えば後者はどのように運営されているのですか?
山下 例えば早稲田大学放送研究会に放送のオペレーションを委託するなどして、ノウハウを持った様々な団体と協力しながらやっています。また、演目は参加する各団体がそれぞれ考えた企画をやっています。
●警察や地元商店会とも連携
–「早稲田祭2013」当日は、約500名の運営スタッフが総出で対応に当たるのでしょうか?
山下 はい。各人が担当の持ち場を持って対応しますが、例えば将棋倒しが起きて死傷者が出たら早稲田祭は即中止となるので、他の団体に手伝っていただきつつ、警備にものすごい人数を投入しています。また、警備という観点では、警察とも連携しますし、「早稲田祭2013」当日に公道を通行止めするため、やらなければならない仕事は多岐にわたります。
–山下さんは、そのような大規模なイベントの運営スタッフ代表であり、大人数のスタッフを束ねる立場でもありますが、どのようなご苦労がありますか?
山下 私たちは社会人と違い報酬がないので、それを「やりがい」で担保しなければなりません。例えば、合コンは「楽しい時間」というリターンが明確ですよね。運営スタッフもやりたいことをやるという点では同じですが、泥臭い仕事や雑用も多い。「飲み会や合宿が楽しい」というだけでは人は残らず組織が持たないため、運営スタッフにいかに仕事にやりがいを持ってもらうかということを、常に意識しています。
ですので、運営スタッフにはいつも「少しずつ改善を重ねて、どんどん新しくしよう」「とことんこだわってプライドを持ち、そこに達成感とやりがいを感じよう」と言っています。
–大勢の学生が、自ら手を挙げてあえて大変な運営スタッフに参加してくる理由は、やはり「やりがい」ですか?
山下 ええ。早稲田祭は規模が大きいこともありますし、歴史を考えても面白い側面がたくさんありますので、早稲田祭の運営スタッフは本当に恵まれた環境にあるといえると思います。
–今年の早稲田祭の目玉はなんですか?
山下 今年度の「早稲田祭2013」は、「本気であれ。早稲田らしくあれ。」というテーマを掲げていて、それぞれの活動に情熱を注ぎ、本気で取り組んでいる参加団体の熱気、そしてその活動の多様性が目玉ですね。そんな早稲田ならではの光景をぜひ見ていただければと思います。また今年度は、従来は「団体かサークル」単位でのイベント参加だったところに、個人枠をつくったりしました。今年度はサークルありきの学園祭を脱しようと思っています。そこで、例えばジャンルに関係なく、個人がそれぞれの技や芸を披露できる場を設けたりしています。
–あとは天気に恵まれればいいですね。
山下 早稲田の学生の熱気で、早稲田祭2日間は絶対に晴れにしたいと思います(笑)。
(構成=編集部)