犯罪についても同様で、成熟しているはずの30代以上の大人が少ないため、若い犯罪者が手探りで犯行を重ねているのである。本来であれば街中で強盗するのに拳銃を持つ必要はないはずなのに、銃撃して余計な被害を相手に与えてしまう。このような被害が増えれば、警察も本腰を入れて警戒をすることになる。そして取り締まりが厳しくなれば、より強引な手段で強盗を重ねる。しかも外国人相手に発砲すれば国際問題に発展して、取り締まりがさらに厳しくなるのは容易に想像がつく。逆に言えば、この程度の判断もできないような犯罪が横行しているのだ。また一説には、薬物を摂取した犯罪者の増加もあると見られており、いつ誰が犯罪に巻き込まれても不思議ではない。
●海外で特に気をつけるべきことは?
では、旅行者や出張者は、どのように対処すればいいのだろうか?
世界の危険地帯を取材してきた旅行作家の嵐よういち氏は、日本人の犯罪被害についての認識に根本的なズレがあると指摘する。
「海外で犯罪に巻き込まれる時は、昼間であろうが突然強盗が襲ってくる。海外慣れしていても、やられる時はやられる。何もとられないようにするのではなく、最小の被害で済ませるという発想の転換が必要です」
さらに嵐氏は、最近のビジネスパーソンや旅行者が巻き込まれやすいケースとして、スマートフォン(スマホ)の使い方に問題があると警鐘を鳴らす。
「鞄に貴重品を入れて、スマホを操作しながら歩いているような海外慣れしていない人は、強盗にしてみれば格好のターゲットです。海外でそんな歩き方をしていれば、襲われても文句は言えないところです」
意外に思われるかもしれないが、海外での歩きスマホは非常に危険なのである。転倒するなどの自損事故を引き起こすからではなく、強盗をムダに呼び寄せてしまうのだ。
韓国やインドネシアに支社をもつ電機メーカーの管理職の男性は、「社内の海外出張組の間では『iPhoneは屋外で使うな』が合言葉になっています」と言う。iPhoneは世界中どこでも一律に300~500ドルと高値で取引される。それが盗品であっても同様である。つまり強盗から見れば、iPhoneはむき身で数百ドルの現金を持っているのと同じことなのだ。
しかし今の時代、短期旅行や出張でスマホはもはや必需品だ。どうしても持ち歩くのであれば、使用場所に配慮していく必要があるだろう。「ここは日本ではない、それどころか危険地帯にいる」と強く意識しておかねばならないのだ。
忙しいビジネスパーソンにとって、出張や短期の旅行は、あくまで日常の延長である。再び何事もなく日常に戻るために、危険を回避するための対策を十分に取っておく必要がある。
(文=丸山佑介)
●丸山佑介
1977年生まれ。フリージャーナリスト。国内外の危険地帯に潜入取材を繰り返す。著書は『海外あるある』(双葉社)、『海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)ほか多数。