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「大塚将司『反メディア的!その記事、ダマされていませんか?』」第25回

安倍政権の女性登用拡大政策、経済成長の阻害要因の懸念 霞が関人事で早くも弊害露呈

文=大塚将司/作家・経済評論家
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 その最たる人事は、厚労省の村木厚子事務次官の続投だ。同省では13年7月に村木氏が事務次官に就任して以来、法案の条文作成ミスや就労支援事業をめぐる不適切入札など、不祥事が頻発しており、ガバナンスに問題があると批判されている。

 従来であれば、トップの責任問題が追及されるところであるが、村木氏が大阪地検特捜部による証拠改ざん事件の被害者として有名になったこともあり、政権は処分を避けているようだ。

 官僚トップである事務次官の任期は1年が長い間の慣習で、村木氏を交代させても、「通常人事の範囲内、引責人事ではない」と説明すれば誰もが納得するだろう。それにもかかわらず続投させたのは、女性幹部の人数を減らしたくないという思惑が働いたと指摘されても反論できないだろう。

●追従する経団連

 安倍首相が女性登用を拡大させようとしているのは、霞が関だけではない。成長戦略で打ち出した数値目標達成に向けて地方自治体や大企業の取り組みを加速させるのが狙いで、新法を制定する方針で、早ければ秋の臨時国会に提出し、成立を目指すらしい。企業や地方自治体に女性の登用を増やす行動計画をつくるよう求めることが柱となるという。

 こうした政権の動きに、日本経済団体連合会(経団連)も呼応している。今年4月、経団連は女性の活躍推進の加速化に向けた「女性活躍アクション・プラン」を公表。これに基づき、会員企業47社の女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画を7月14日、経団連のホームページ上で公開した。榊原定征会長は翌15日、約1300社全企業会員代表者に対し、年内に同様の計画をつくるよう呼びかけている。

 先進国はもちろん、発展途上国も含めた諸外国に比べ、日本は女性の社会進出が遅れているのは間違いない。安倍首相が「女性登用」に躍起になるのはよくわかる。しかも、人口減少時代を迎え、経済成長に必要な労働力人口を確保するには、働く女性を増やすことが必要だ。

 しかし、中央省庁や大企業、地方自治体で働くのは労働力人口のほんの一握りにすぎない。だからこそ、多くの女性が専業主婦を選ぶ一因になっている配偶者控除の見直しが議論になっているのではないか。

●経済成長の足かせになりかねない懸念も

 いずれにせよ、安倍政権の行った霞が関人事は人気取りを狙ったパフォーマンスにすぎない。それでも、本当に“適材適所”が貫かれているならいいが、そうとはお世辞にもいえない。

 数値目標をつくれば、数合わせに流れる事態は当然に起こり得る。トップや幹部人事を間違えると、どんな組織も堕落し、いずれ取り返しのつかないことになる。それを防ぐには、メディアによるチェック機能が働かなければならないが、十分に機能しているとはいえない状況だ。

「鉄の女」のサッチャー元英首相、「ドイツ版・鉄の女」のメルケル独首相、ヒラリー・クリントン元米国務長官のような女性リーダーが日本でも誕生するなら、文句はいうまい。しかし、霞が関の人事を見ていると、数合わせに汲々としているのは間違いなく、それは夢のまた夢というほかない。大企業のトップも推して知るべしで、現在安倍政権が推進する女性登用政策では、経済成長の足かせになりかねないと懸念される。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

●大塚将司(おおつかしょうじ) 作家・経済評論家。著書に『流転の果て‐ニッポン金融盛衰記85→98』上下2巻など

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